更に種類も豊富になった最近の医療保険・・・検討の際のポイントと最近のご相談事例

ここ最近は物価の上昇も激しく、少しでも出費を抑えたいと家計見直しをされる方も増えています。
家計の見直しに効果的なのは、毎月定期的に出費が続く「固定費の見直し」です。
その固定費の中でも、携帯の使用料と生命保険料は、目立つ値上げはされておらず、見直しによって効果を得られやすいところです。

今回はその中でも、多くの方が加入している「医療保険」の、加入や見直しの際のポイントについて、最近のご相談事例とともに確認していきたいと思います。なお、医療保険については以前このブログで「医療保険は戦国時代!?最近のトレンドと検討する際のポイント」という投稿をしています。今回は重複しない内容になりますので、以前の記事と併せて参考にしていただければと思います。

 

まずは公的医療保険の確認から

医療保険を検討する前にまず確認をしておきたいのが、社会保険としてどなたも加入している「健康保険」についてです。
健康保険には、主に自営業の方が加入する「国民健康保険」、会社員が加入する健康保険組合の「健康保険」、公務員が加入する「共済組合」、そして75歳以上の高齢者には「後期高齢者医療制度」があります。
これらの制度は国や自治体など公的な機関が運営しており、「公的医療保険」と呼ばれることもあります。

この公的医療保険は、小学生以上~69歳の場合、医療費の自己負担割合が原則3割負担、小学生未満は2割負担、70~74歳は収入により1~3割負担となります。
また、後期高齢者医療制度も、収入により1~3割負担となっています。

また、医療機関等で支払った医療費がひと月の上限額を超過した場合、その超過分を支払う「高額療養費制度」もあり、高額な医療費の負担を軽減する制度があります。

例えば、69歳以下で年収約500万円の方の場合、1カ月間の医療費の上限額は
80,100円+(医療費-267,000円)X1% となっています。

仮に医療費が100万円になっても、実質負担額は87,430円となり、大幅に負担が抑えられることになります。(入院時の差額ベッド代や食事代は含まれません)

また、12カ月の間に3回以上この上限を超えた場合は、多数回該当として、4回目からの上限額は44,400円となります。収入により上限額は異なるので、ご自身の上限額を把握しておくと安心です。
収入毎の上限額など詳細は、厚生労働省のホームページに掲載されています。

そしてもう一つ、健康保険組合の健康保険や共済組合については、傷病で一定期間仕事ができない場合に、収入の一部を健康保険から補填する「傷病手当金」という仕組みもあります。

こちらは、病気やけがのために出勤できず給与が受け取れない場合、直近12カ月間の標準報酬月額の平均額を30で割った3分の2の額が、最短4日~最長1年半の間支払われる制度です。
つまり、おおむね収入の3分の2にあたる金額を、最大1年半受け取ることができます。

このように、公的医療保険の「高額療養費」「傷病手当金」の制度は、大きな病気をした場合に支えになる制度です。医療保険を検討する前に、これらの制度についてまず把握しておく事が大切です。

 

最近の民間の医療保険はますます種類豊富に

このような「公的医療保険」に対し、保険会社などで加入する医療保険が「民間の医療保険」となります。
民間の医療保険は、あくまで公的医療保険で不足する保障をカバーするために加入する保険と考えるべきでしょう

民間の医療保険は、商品開発競争も激しく、毎年のように新しい商品が発売されています。
以前は、入院給付金・手術給付金といった保障が中心でシンプルなものしたが、現在は、特定の疾病と診断されたり、特定の治療を受けたりした場合に給付金を受け取れるなど、給付事由も細分化されるようになっています。

入院給付金についても、日数単位ではなく、一度の入院でまとまった給付金を受け取れるタイプも増えています。
これは、医療技術の進歩や入院日数の短期化により、入院・手術の給付のみではカバーできない範囲が広がっていることが背景にあります。

また、数年ごとにお祝い金の様な給付金が受け取れたり、一定期間継続すると支払った保険料の全額が払い戻されたりするといった商品まで出ています。

このように、保険会社も差別化を図り、様々なタイプの商品を発売しています。
また、従来の商品でも、保険料の払込期間や特約の設定など、様々なアレンジが可能です。

商品や特約が充実するのは良い事ですが、どの様な形の商品を選ぶのがベストなのか、迷ってしまします。
また、充実した保障を持てれば安心ですが、保険料があまり高額になるのは避けたいところです。

以下では、最近よくある医療保険のご相談事例をご紹介してきたいと思います。

 

〇数日の入院で給付金が数十万円!多く受け取れるから安心!?

最近は、特に国内の大手保険会社を中心に、入院日数に関わらず、一度の入院で給付金が数十万円も受け取れる保険が多く販売されています。
この様な保険の場合、例えば3日間入院した場合で比較すると、仮に入院日額1万円の保険であれば3万円しか給付されないところ、20万円・30万円といった給付金が受け取れるので、特に短い入院の場合の給付額の差は歴然です。
特に最近は入院日数も短期化しているので、このような給付が安心だと、勧められるケースが多いようです。

しかし、冷静に考えたときに、3日間の入院で20万円も30万円も必要でしょうか?

生命保険文化センターの令和元年の調査結果によると、入院期間別自己負担額の平均は、
5日未満の入院:10.1万円
5~7日の入院:15.6万円
8~14日の入院:21万円
15~30日の入院:28.5万円
となっています。

これを見ると、1週間程度の入院であれば、自己負担額は平均10~15万円であることがわかります。
必ずしも、数十万円も費用が発生するわけではないことがわかります。

給付金が多く受け取れるならば、それはそれで安心ですが、こうした保険の多くは、比較的保険料が高額です。
そのため、10年間など短い期間の保障として、手頃な保険料で提案されるケースが多いようです。
しかし、その期間を過ぎると、年齢も上がっているので、保険料が上昇してしまいます。

具体的な保険料を確認してみると、
保険会社Aの「入院総合保険」
40歳女性・入院給付金額1回あたり30万円(30日あたり・90日まで)・保険期間10年
保険料月額¥4028(50歳の場合¥6340、60歳の場合¥10262)

この様に、年齢により保険料は上昇していきます。
(上記は新規加入の保険料であり、実際にはその年齢に到達した時点での保険料が適用されます)

このような、入院日数に関わらずまとまった一時金が受け取れる保険は、安心感も大きいです。
しかし、高額療養費制度や傷病手当金など、公的保険がある環境であれば、それほど大きな給付金は不要でしょう。
安心だと勧められるままではなく、実際にそれだけの保障が必要か、あるいは将来の保険料がどのように推移するのか、しっかり確認したうえで検討することが大切です。

 

〇支払った保険料が全額還付される保険がある!?

最近は、60歳や65歳など、一定の年齢まで保険を継続すると、それまで支払った保険料を全額払い戻す保険が販売されています。

例えば、ある保険会社の医療保険では、以下のようなプランがあります。

保険会社Bの「医療総合保険・健康還付特則付加」
40歳女性・入院日額5000円・1回の入院60日・手術給付金5万円
保険期間終身・健康還付給付金支払い年齢60歳
保険料月額¥3,040 60歳時還付金729,600円(3040円X12カ月X20年分)

このように、この保険では、加入してから20年間支払い続けた保険料が全額還付されます。
なお、期間中に入院や手術で給付金として支払われた分は、還付金から差し引かれます。
数年間支払った保険料が丸々還付されるので、実質保険料負担が無い事になります。
特に、「掛け捨て」を敬遠したい方には、実質負担量ゼロになるので、お問合せも多い商品です。

この様にお得感の大きい保険ですが、検討の際には、以下に注意する必要があります。

・保険料は割高になる
この様な仕組みの保険の場合、保険料は通常のものより割高です。
一度還付金を受け取った後、高齢になっても保険料は変わらず、その後は還付金もありません。
高齢になってからの保険料の負担が相対的に大きくなるので、その際も継続できるか確認する事が必要です。

・付加した特約の保険料分に払い戻しは適用されない
この還付金の対象になるのはあくまで主契約のみになり、特約には還付金の対象となりません。
したがって、保障を充実させるため特約を付帯すると、還付される金額の割合は相対的に低くなります。

・給付金の受取に躊躇する
この保険にご加入の方は、給付金を受け取ると将来の還付金が減額されるため、入院や手術をした場合でも、給付金の受取に躊躇する方が多いようです。そう考えると、そもそも保険としての役目を果たしているのかが疑問です。

このように、還付金のある保険は一見お得ですが、使い勝手の悪い点もあるので、損得だけで判断しないことが大切です。

また同様に、保険を継続している間、数年間に一度、まとまったお祝い金が受け取れるという商品や特約もあります。
無意識のうちに引き去られていく保険料からお祝い金が受け取れるので、こちらもお得感があります。
しかしこちらも、お祝い金を支払うための費用が保険料に上乗せされています。
本来必要である保障とそれに対する保険料を、まず確認したうえで検討することをお勧めします。

 

〇保険料払込免除の適用範囲が広がっています

最近の医療保険は、「保険料払込免除特約」が充実してきています。
保険料払込免除特約は、例えばがんなど一定の状態になった場合、その後の保険料の払い込みが免除になるという特約です。
大きな病気を患い不安を感じているときに、保険料の払い込みが免除になるのは大きな安心につながると思います。
この免除になる理由が、最近幅広くなってきているもの特徴です。

具体的には、以前は「がん(上皮内がんを除く)」「急性心筋梗塞」「脳梗塞」の場合、払込免除になる特約が多かったものが、最近は「がん(上皮内がんを含む)」「(急性心筋梗塞に限らない)心疾患」「(脳梗塞に限らない)脳血管疾患」と、範囲を広げて払込免除とするケースが増えてきています。
中には、7~8大疾病で一定の状態になった場合も払込免除になるなど、更に範囲を広げている保険会社もあります。

この「保険料払込免除特約」は、是非付帯しておきたい特約です。
しかしこちらも、当然の事ながら免除になる範囲が広がるほど、保険料は相対的に高くなります。
しかもこの特約は、特約料金が明記されているわけでなく、保障全体に一定の割合で加算されるものなので、この特約の有無での保険料差額を検討しにくい面もあります。

この「保険料払込免除特約」も、適用範囲が広いほど安心ではありますが、それによりどの程度保険料に差額が出るのか、よく確認して検討することが必要です。

 

〇保険料の払い込みは早く終える方が良い?

保険料の払込期間についても、よくご相談を受けるテーマです。
払込期間の設定は、従来の商品でもある程度の範囲で柔軟に設定が可能です、
例えば、保障は一生涯だけれども、保険料の払い込みは60歳や65歳など仕事をしている間に終えたいという方は、特に女性を中心にご要望も多いです。

しかしこちらも、払込期間を短くした場合、保険料は割高となります。
例えば、以下の保険会社のプランで比較してみます。

保険会社Cの医療保険を、終身払込した場合と60歳払込満了にした場合
40歳女性・入院日額5000円・1回の入院120日・手術給付金5万円・保険期間終身
特定疾病保険料払込免除特則あり
保険料:終身払込月額¥2,295/60歳払込満了¥4,200

終身で払い込む場合と、60歳で払込満了する場合の保険料の差額は2000円近くあります。
保障期間はいずれも終身なので、若い方ほど払込期間が長いので、この差額は小さくなります。
一方で年齢が上がるにつれて、この差額はさらに大きくなります。

この場合、60歳までの総支払保険料は1,008,000円となります。
したがって、終身払込で77歳まで生きていれば、総支払保険料は終身払込の方が少なくなります。

この様なお話をすると、特に平均寿命の長い女性の方は、早く払込みを終えるプランを選びたくなる傾向があります。
しかしこうした短期払込の場合も、以下の点に注意が必要です。

・払い込んでいる間の保険料が高くなる
・途中で保険を見直すことになると、結果的に見直し時までの保険料は終身払込より多く支払う事になる
・保険料払込免除特約付帯の場合、払込免除が適用されると、その時点までの保険料を終身払込より多く支払う事になる

このように、「一生涯この保険を健康のまま継続する」と言う前提であれば良いかも知れません。
しかし、医療制度も保険商品も時代によって変わるものです。物価の変動もあるし、ライフプランも変わります。
今後数十年間、一切保険を見直さないという事もないでしょう。
また、大きな病気をして保険料が払込免除になる事もあるかも知れません。

こうした点を考えると、終身の医療保険であれば、私は終身払をお勧めすることが多いです
生涯の保険料を早期に払い終えるわけではないので、今後の変更も柔軟に対応できます。
老後の保険料の負担が心配といっても、上記の例で言えば月2000円程度です。
高齢になって病気のリスクが高まれば、同じ保険料でも、その価値は大きく感じられるのではないでしょうか?

 

負担にならない範囲でシンプルなものを選ぶのがベスト!

このように、最近は保険会社も工夫をして様々な商品を発売しています。
保障も充実してきており、なるほどこれがあれば安心だと思う保障も多いです。
しかし、民間の医療保険はあくまで公的医療保険を補完するものです。
あれもこれもと補償や特約を付加しすぎて、保険料が大きな負担になっては意味がありません。

私は、会社員の方であれば、入院等に関しては日額5000円程度の入院保障に手術給付金が付帯した、シンプルな終身の医療保険があれば十分ではないかと考えています。
そこに、5万円や、多くても10万円程度の入院一時金があると安心かもしれませんが、ある程度手元に貯金があれば、それも不要です。

ましてや、一度の入院で日数に関係なく20万円も30万円も給付される保険は不要でしょう。
入院日数が長引けば、その日数に合わせて給付されるもので良いと思います。
保険料も、終身払込で入院一時金を含めても、大まかな目安ですが、20~30代は2000円台、40代は3000円台、50代は5000円までに収めたいところです。

その他に、がんと診断された場合に診断給付金が出る「がん保険」は必須のものと考えています
特にがんについては、入院や手術以外に、抗がん剤治療やホルモン剤治療といった治療法も広まっています。
また、一度罹患すると長期間療養する場合もありますし、再発するリスクもあります。

最近の「がん保険」は、一度診断給付金が給付されたあとも、一定期間経過後に再発した場合や治療が継続している場合に、再度給付される商品も多いです。その様な給付が複数回受けられるがん保険があると安心です。

もちろん、それぞれ家庭環境や経済状況によって、必要な保障額は異なります
また、保険の場合、損得勘定ではなく、加入していることにより安心感が得られるのも大きなメリットです。
身近な親類ががんの闘病で苦労したとか、家系的に脳血管疾患が多いとか、そのような事も考えて、備えると安心できる保障を選択して加入すると良いと思います。
過剰に加入する事は避けなければなりませんが、リーズナブルな保険料で安心できる保障に加入できれば良いですね。

そのためには、保障内容はもちろん、保険の期間・払込免除の規定も確認するなど、しっかりと検討したいものです。
これだけ多くの保険会社が様々な商品を販売していると、選ぶのも迷ってしまいます。
しかし保険料は毎月負担が続くもの、数百円の差額も数年たてば数万円・数十万円と差が出てくるものです。
1社からの見積りだけで決めるのではなく、数社の保険の見積もりを取って検討されることをお勧めします。

当オフィスでは直接保険商品の提案はしていませんが、提携の保険代理店より複数社の保険のプランをご紹介させいただくことができますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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