東日本大震災より12年・・命を守る準備の次に、「地震保険」など財産を守る準備の確認を

今年も3月11日を迎えました。
東日本大震災から12年。早いもので、干支が一回りする時間が経過しました。

私の住む横浜市では、大きな揺れはありましたが、停電もなく被害はさほどありませんでした。
しかし、その後お店から商品がなくなり、原発の爆発事故で放射能汚染のリスクが高まるなど、しばらく経験したことの無い生活が続きました。

それ以来我が家では、非常用持ち出し用具を、キャンプ用品を中心に一式取り揃えています。
また、自宅に水や食糧・トイレ用の凝固剤を備蓄、車のガソリンも早めの給油を心がける等の準備をしています。

これらの準備は非常事態の中で生きていくために必要な準備です。
一方で、大地震で被害を受けた際に、自分の財産はどのように守ることができるでしょうか?

大地震の際に財産を守る保険として、多くの方が「地震保険」を考えると思います。
しかし、自分の家が地震保険に加入しているかどうかくらいは覚えていても、どの程度の金額がどの様に給付されるかまで、覚えている人は少ないのではないでしょうか。
5年間といった長期間で加入していることもあるため、更新を忘れてしまう事もあるかも知れません。

またその他にも、地震で死亡したり、大けがをしたりした場合どうなるのか、運用している資産はどうなるのか…考え出すと気になる点はいろいろと出てきます。

今回は3.11を迎えたこの時期に、地震保険をはじめ、大地震から財産を守る術を確認していきたいと思います。

 

地震保険は被災者の生活再建の経済的支え

地震保険は、大地震や津波で被害を受けた際に、住宅や家財などを対象に、その被害の度合いに応じて保険金が受け取れる保険です。
ただしこの地震保険は、火災保険に付帯して加入するもので、単独で加入することはできません
またよく言われることですが、地震が原因の火災の被害は、火災保険ではカバーされません。

大地震の被害は地域一帯に幅広く広がります。
したがって、保険の請求額も一度に多額になります。
過去最大の支払保険金は東日本大震災で、支払額は1兆2800億円以上になったということです。

この様な性質から、地震保険は政府と民間の保険会社が共同で運営しています
補償内容も保険料も、どの保険会社から加入しても一律であり、保険会社の利潤は含まれないのも特徴です。
このように、地震保険は通常の保険と違い、非常に公共性の高い保険という事ができます

また、補償額についても、1敷地・1被保険者あたり、火災保険で掛ける住宅や家財の保険金額の30~50%以内で、建物は5000万円・家財は1000万円までという制限があります。

保険金の支払い方法についても、一気に被害世帯が多数出る状況で、1件1件被害額を認定するのは大変です。
そこで、被害の度合いに応じて、被害の程度を全損・大半損・小半損・一部損の4段階に分類し、それぞれ保険金額の100%・60%・30%・5%を支払う事として、スムーズな支払いができる仕組みになっています。

保険料は、地域や建物の構造により設定されています。
地域の違いでは、例えば一般的な木造住宅の場合、保険料率の低い27道府県は、保険期間1000円当たり1.23円であるのに対し、保険料率の高い千葉県・東京都・神奈川県・静岡県は4.22円となっています。(2021年1月改定値)
なお、この地域や保険料率は、地震発生の危険度により、数年毎に見直されています。

一方、建物の構造では、マンション等鉄筋コンクリート造りや鉄骨造りの場合と、一般の木造住宅で1.5~2.3倍程度の料率の違いがあります。
また、耐震構造や築年数により、10~50%の割引が設定されています。
こうした保険料の設定も、各社共通で、画一的でわかりやすく設計されています。

このように、地震保険は、
・国と生命保険会社の共同運営で公共性が高いこと
・単独では加入できず、火災保険に付帯して加入すること
・個人の生活再建が目的であり、保険の対象は個人の住宅と家財に限られる事
・一度に大きな被害に対応するため、保険金額に制限があり、また給付も被害度合いに応じて一律であること
といった特徴があります。

地震で被害が出た場合、国も被災者生活再建支援制度もありますが、支給額は最高でも300万円と、最低限の保障にとどまります。災害の際には、自助努力で財産を守るという準備が必要です。

その様な中で地震保険は、単に火災保険に付帯する補償という存在ではなく、大地震で被災した場合の生活再建費用として、準備しておくべきものだと思います。

現在、地震保険の世帯加入率は、2021年時点で34.6%。年々上昇しているとはいえ、まだ3世帯に1世帯程度の割合です。現在火災保険に加入していれば、多くの場合、途中付加することも可能です。
地震保険の加入率はもう少し高まると良いと思います。

 

その他に地震の被害に給付される保険はあるのか

このように、地震保険はまさに地震のための保障という事ができますが、そのほかに地震の被害で給付される補償はあるのでしょうか?

火災保険では、商品によりますが、地震保険とは別に、「地震火災費用保険金」が支払われる場合があります。
これは、地震による火災で建物が被災した場合の補償で、地震保険に上乗せすることが可能です。
通常の場合、保険金額の数%程度が標準的に付帯されているケースが多いですが、最近では追加料金を支払う事で、保障割合を30%・50%などと上げられる商品も出てきています。(上限額はあります)

また、個人で所有する財産で、住宅の次に大きな財産と言えば、自動車になるかと思います。
しかしこの自動車は、地震に関する手厚い補償はありません。

例えば、自分の車を修理する際に役立つ車両保険も、台風や水害は補償の対象になりますが、地震や津波は補償の対象外です。駐車場に止めていた車が津波で流されても、保険は適用になりません。

最近では、地震・噴火・津波で車が全損となった場合、一時金を支給する特約が用意されている保険会社があります。
それでも限度額は数十万円程度に限定されているケースが多く、車両価格を完全にカバーするものではありません。

このように、地震による財産の被害は、保険では完全にカバーする事はできないと考えておく必要があります。

 

死亡したりけがをしたりした場合、保険は適用になるのか

一方、財産とは別に、地震で死亡したりけがをしたりした場合、保障は対象になるのでしょうか?
死亡やけがなどの場合の保険は、生命保険や医療保険が出番になります。

一般的に、生命保険や医療保険は、大地震など自然災害の場合の免責を設定していません
したがって、死亡した際の保険金や、入院した際の給付金は支払われると考えて良いでしょう。

ただし、不慮の事故で死亡した場合に割り増しして給付される「災害割増特約」「傷害特約」といった災害関係の特約は、地震の規模や被災人数によって支払われなかったり、削減されたりする場合があると約款上の規定があります。

しかし、東日本大震災の際も、すべての保険金・給付金は支払われているということです。
生命保険・医療保険の死亡やけが等の保障に関しては、加入している生命保険が役に立つと考えて良さそうです。

一方で、ケガなどに備える傷害保険は、地震によるけがを補償していないケースが多いです。
この場合は、「天災危険補償特約」などの特約を付けることでカバーされる事があります。

もっとも、この様な保険にお世話にならないようにするのが一番ですね。
日頃から、家具の固定、避難場所の確認など、基本的な準備が、まず何よりも大切です。

 

大震災で混乱する中で、資産運用への影響は?

大災害が発生すると、当然のことながら、経済にも大きな影響を与えることになります。
最近では資産運用を始めた方も多いと思いますが、その様な運用商品には、影響が出るのでしょうか?

まず影響が出るものとして、為替相場が考えられます。
ちなみに、仮に日本で大震災が起きた場合、やはり円の価値は下がり、円安が進むのでしょうか?

これについては、一概には言えませんが、どちらかというと逆に円高になる傾向がみられます。
実際に東日本大震災の際は、震災後に円高が進みました。
この点は意外と思われるかもしれませんが、
・震災の復興のために使う資金の需要が高まる
・保険会社が保険金を支払う資金を調達する必要があり、保有する外国債券を売却する。
・不安が増幅し、新興国など金利が高くリスクの高い通貨から、金利の低い円に資金が流入する
といった原因が考えられる様です。

また、株式相場なども、業種によって影響が出ます。
地震で大きな被害の出た地域を拠点にする企業は、当然のことながら株価の下落が予想されます。
また、レジャー・旅行関係なども下落することが多いです。
一方で、復興需要を見込み、建設関係・インフラ関係の株は、上昇することが多いでしょう。

東日本大震災で、最も影響を受けたのは東京電力の株式です。
震災前に2000円台で推移していた株価が、震災後には100円台に突入し、10分の1以下の価格になりました。
現在はそれより上昇しているものの、それでも400円前後と、震災前の5分の1程度です。

しかし、東京電力は原発事故による膨大な賠償費用が生じた特殊なケースと考えて良いでしょう。
多くの場合、為替も株式も、一時的に大きな変動があるにせよ、長期的に影響が続くという事は少ないようです。
長期分散運用に取り組んでいれば、過剰に心配する事はないでしょう

この点は事前の準備というよりも、いざ震災が発生した際に、慌てず冷静でいることが一番大切なことだと思います。

 

まずは何よりも命を守る準備から

今年に入ってからもトルコで大地震が発生しましたね。
大地震はいつどこでやってくるかわかりません。

地震保険などの備えも大切な準備ではありますが、それは被害を受けた場合に役立つ準備です。
まずは、家具の固定、避難経路の確認など命を守る準備
次に、水や食料の備蓄、停電の備えなど、1週間程度の生活インフラの確保
こうした生きていくための準備がまずは最優先なのは言うまでもありません。

大地震のことなど、本当はあまり考えたくないですね…
とは言え、日本に暮らしている以上避けることのできない準備。
年に1回、是非この機会に確認されることをお勧めします。

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