米国の銀行が相次いで破綻・・・日本の金融機関が破綻したら、預けている資産はどうなるのか

先日、米国のシリコンバレーバンクとシグネチャーバンクが相次いで破綻、すわ金融危機再来かと大騒ぎになりました。
これらの銀行については米国財務省が預金を全額保護すると発表して、騒動はやや落ち着きを見せています。

しかしこの騒動はヨーロッパへ飛び火、以前より経営不振と言われていたクレディ・スイスの株式が大幅に下落し、破綻懸念が高まりました。こちらもスイス政府が保護する姿勢を打ち出しています。

今回の一連の流れでは、今のところリーマンショックの様な世界的な金融危機に至る懸念は少ないと言われています。
しかし、かつてのバブル崩壊の時のように、この先日本にもこのような金融危機が訪れることがあるかも知れません。

最近の欧米の危機が日本にも迫っていて、今すぐ対処しなければいけない、という状況ではありませんが、少なくとも、自分の財産を預けている金融機関が破綻した場合どうなるのかは、普段から知っておいた方が良いですね。

というわけで今回は、銀行・証券会社・保険会社等が破綻した場合、私達が預けている資金はどのように守られるのか、これを機に確認をしておきたいと思います。

銀行の普通預金や定期預金は1000万円まで保護される

銀行の普通預金や定期預金は、預金保護制度により、1000万円までとその利息は保護されます
この規定は多くの方がご存知かもしれませんね。ペイオフ制度ともよばれています。
よくご相談の際も「1000万円を超えないように、いくつかの銀行に分けて預金しています」というお話を聞きます。

因みにこの預金保護制度の対象となるのは、預金者1人あたり
当座預金や利息の付かない普通預金
・・・全額保護
利息のつく普通預金・定期預金・定期積金・金銭信託・金融債(保護預り商品のみ)
・・・合算して元本1000万円とその利息まで保護
となります。
なお、外貨預金・譲渡性預金・金融債(募集債や保護預かりが終了したもの)等は保護対象外です。

預金保護制度の対象となる金融機関は、日本国内に本店がある銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会・労働金庫連合会・商工組合中央金庫です。
一方、これらの金融機関の海外支店、および外国銀行の日本支店は対象外になるので要注意です。
なお、農協・漁協・農林中金は、別の貯金保険制度で同様の保護がされています。

1000万円を超える部分については、破綻した金融機関の財産の状況に応じて支払われます。
一律1000万円までカバーされる、というわけではありません。

この仕組みは、金融機関が預金を保護するための預金保険に加入しており、万一破綻した場合は、保護される部分が保険金として支払われることになっています。
なお、破綻銀行が別の金融機関に引き継がれる場合、その金融機関に預金保険機構から資金を支援することで、保護される場合もあります。

いずれにしても、1つの金融機関に1000万円までとして預金をしておけば、預金は守られると考えて良いでしょう。
逆に多くの方がご存知の通り、1000万円以上預金がある場合は、他の金融機関に移動する等、対策をされる方が安心ですね。

 

証券会社で運用している株や債券、投資信託はどうなる?

最近はNISA口座の利用も広まって、証券会社で株式や投資信託を運用している方も増えていますね。
その証券会社が破綻した場合、そこに預けている株式や投資信託はどうなるでしょう?

以前、山一證券が破綻したのを覚えている方も多いでしょう。
当時はバブルが崩壊した時期、大きな証券会社でも、破綻することがあるものだと驚きました。

しかし、証券会社に預けている株式や投資信託などは、全額保護されます
それは、証券会社は、顧客の資産である株式や投資信託等は別々に管理する事が義務付けられているからです。
また、仮に顧客の資産が保全されていなかった場合でも、投資者保護基金として、上限1000万円までは保護される仕組みがあります。

考えてみれば、証券会社は、顧客の株式や投資信託の販売窓口となり、管理をしているのみです。
もし証券会社が破綻した場合は、別の証券会社に移管されます。
その間に売買できない、口座を開設する等の面倒はあるでしょうが、株や投資信託自体は証券会社の財産ではないので、それらの資産は守られると考えて問題ありません。

なお、投資信託の運用会社が破綻した場合も同様です
運用会社は運用の指図をするのみで、信託財産は運用会社とは別に信託銀行等で管理されています。
仮に破綻しても、別会社に引き継がれるか、資金を償還して顧客に返金することになります。

このように、証券会社や投資信託の運用会社が破綻しても、資産は全額保護されることになります
もちろん、破綻した会社の株式を保有していた場合は、保護されません。当たり前ですね‥

 

保険会社の保険商品の保障や解約金は?

生命保険会社の場合も、「生命保険契約者保護機構」によって、一定の範囲の契約が保護されます
この保護機構には、国内のすべての生命保険会社が加入しています。

破綻しても、救済する保険会社が契約を引き継ぎ、破綻後も同じ保障を継続できる場合もあります。
一方、救済する会社が無い場合、保護機構が承継会社を設立して契約を引き継ぐこともあります。

なお、生命保険の場合、保険金等を支払う資金である責任準備金が削減されることがあります
原則、破綻時の90%は補償され、残り10%の部分は更生計画により決定する事となります。
ただし、過去の契約などで予定利率の高い契約は、この90%部分も削減される仕組みがあります。

責任準備金の90%が保護されると言っても、保険金や解約金が90%保護されるわけではありません
場合によっては、契約条件の変更により、保険金や解約金が大幅に削減される可能性もあります。

例えば、20~30年前など金利の高かった時代の契約は、生命保険会社が約束する利回りである予定利率の高い保険契約が多くありました。この様な保険契約の保険金や解約金の削減幅は大きくなります。
また、保障性の高い定期保険・医療保険は削減幅が少なく、貯蓄性の高い終身保険・年金保険等は削減幅が大きくなります。

因みに、過去に破綻した保険会社は1997年~2001年のバブル崩壊前後に集中しています。
過去に契約した高い予定利率の商品の保険金や解約金支払いで資金が行き詰まり、破綻した事例がほとんどです。
全ての会社が別の会社に引き継がれましたが、予定利率は大幅に下げられて、保険金や解約返戻金は大幅に削減されています。

このように、生命保険の場合は、完全に契約が無効になることはないものの、保険種類や契約時期によっては、保険金や解約返戻金が削減されるケースもあり得るので注意が必要です。

なお、保険会社の支払い能力の判断材料として「ソルベンシー・マージン比率」という指標があります
この数値が200%を超えていれば、支払い能力に問題のない健全な保険会社とされています。

現在のところ、生命保険会社についてはすべての会社が500%を超えており、どの会社も問題はありません。
ただしこの指標は、自社で算出している点、また大きな資本を持つ会社の子会社である保険会社は数値が大きく出る傾向にあります。過去に500%を超えていながら破綻した会社もあるので、あくまで参考程度としてください。

なお、損害保険会社にも生命保険会社同様の契約者保護の仕組みがあり、契約が保護されます。

損害保険の場合、保護される範囲は保険の種類によって異なっています。
例えば、公共性の高い自賠責保険や地震保険は全額保護、
任意の自動車保険や火災保険・賠償保険・旅行保険等は、破綻から3カ月以内の保険事故については全額保護となり、3カ月経過後は80%の補償となります。
なお、疾病や障害に関する保険は、当所より保障割合は90%となります。

 

キャッシュレス決済業者はどうなる?

最近は現金を使う場面が減り、キャッシュレス決済を活用している方も多いと思います。
銀行や証券会社・保険会社ほど多額の資金を入金していないかもしれませんが、4月からはキャッシュレス決済で給与支払いも可能になるなど、利用する場面も増えるので、確認をしておきたいところです。

PayPayやD払い・楽天Payなど、キャッシュレス決済を管轄する法律は、資金決済法になります。
これによると、利用者の未使用残高が1000万円を超えると、残高の2分の1を保証金として供託する義務があります。したがって、単純計算では、預けている資金のおおむね半分は保護されるという考え方になります。
なお、この保護の対象は預けている資金であり、ポイントについては保護の対象外です。

この様に考えると、キャッシュレス決済やポイントについても、経営に問題のない会社のサービスを利用し、あまり多額の金額を入金しない、ポイントは貯まってきたら早めに使う、といった利用方法が良さそうです。

 

FX(外国為替証拠金取引)業者・暗号資産業者の場合

FXを取り扱う業者にも、証券会社同様、顧客の資産を会社の資産と分けて管理する事が義務付けられています。
かつては、この様な資産管理がされておらず、破綻して資産が保全されていないケースもありましたが、現在ではそのような事件を教訓に、体制が整備されてきています。

それでも、監督体制が一般の金融機関ほど行き届いているわけではありません。
一部の新興の業者では、こうした管理がされていない場合もあります。
しかるべき監督官庁に届けられていて、安心できる業者で取引されることをお勧めします。

また、暗号資産については、昨年秋にアメリカ大手暗号資産取引業者FTXが破綻して話題になりました。
日本でも法律体系が整備されてきて、改正資金決済法(仮想通貨法)により、顧客の資産の分別管理が義務化されるようになりました。

しかしこちらも、まだ新しい業界であり、管理体制の杜撰な業者や海外の業者などは、管理体制が行き届いていないケースも考えられます。また暗号資産の場合は、情報セキュリティ対策も十分に取られている必要があります。

このように、徐々に法体系が整備されているものの、まだ破綻時の補償体系までは整備されていません。こちらも、利用する際は信頼できる業者の選定が重要です。

 

大切な資金は安全な場所で分散して管理を

このように、金融機関に預けた私たちの大切な資産は、業種ごとに顧客の資産を保護する仕組みにより守られています。
ただし、保護される範囲は限られているので、資産を預ける際は事前に確認をしておく必要があります。

また、多くの預金を1つの金融機関に預けている場合は、出来るだけ分散をしておくと安心です
保険等も、保障額や解約金相当額が多額になる場合は、いくつかの会社に分散すると良いでしょう

そして、キャッシュレス決済・FX・暗号資産など、最近は様々な資金の置き場が出てきています。
特に新興の業者の場合や海外の業者の場合は、必ずしも資金が保全されないケースも考えられます。
利用する場合は、安心できる業者を選ぶことが大切です。

ちなみに今回の米国の2銀行の破綻から始まった金融危機騒動、今後はどのような展開になるのでしょう?
おそらくリーマンショックの様な金融危機には発展しないと言われています。

しかし、仮に金融危機に発展しても、資金を分散して管理する、また株や投資信託など変動する資産の運用は余裕資金の範囲にとどめておく等、事前に対策を取ることにより、資産の減少を最小限に食い止めることができます。

普段からの準備をしておくことで、仮に今回のような騒動が起きても、恐れることなく冷静に受け止めることができると思います。

 

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