学資保険はお勧めしません!?~時代に合わせた教育資金の準備法

先日、数年前にご相談を受けた方から、お子様が産まれたとの報告がありました。
ご家庭の状況の変化があったときにご連絡いただけるのはFPとして嬉しいものです。
当面は育児で大変だけれども、改めて教育資金の相談もするかも知れないとのことでした。

さて、教育資金準備の王道と言えば、今も多くの方が学資保険を思い浮かべるのはないでしょうか?
中には、学資保険はどうしたら良いですか?と当たり前のように相談されるケースも良くあります。
それだけ、学資保険は多くの方に普及している商品だという事がわかります。

しかし最近では、必ずしも学資保険が効率の良い準備方法ではなくなっています。
むしろ、避けた方が良いという考え方も・・・
今回は、そんな学資保険の現状と、学資保険に代わる教育資金準備方法についてお伝えします。

 

教育資金は計画を立てやすい資金

教育資金はライフプランの中でも非常に大きな負担となる資金です。
文部科学省の資料によると、子供にかかる教育費は、高校まで公立、大学は私立文系の場合でも1000万円近く、内大学にかかる費用は500万円近くとなっています。
なお、中学から私立に進学する場合は、私立の中学校・高校の費用の他、塾や受験にかかる費用も生じるため、合計の支出は1500万円近くになることも考えられます。
この点は、詳しくは先日のブログ「こどもの教育資金はどのくらいかかるのか?必要な資金を見える化する」をご参照いただきたいと思います。

このように、大きな金額になる教育資金、準備するのも大変です。
一方で、費用のかかる時期がある程度見通せるので、準備をする上では、計画を立てやすい資金の一つです。

例えば、先ほどの様なお子様が産まれたばかりの方が、その子の大学進学時の資金準備を検討する場合、17~18年後を目標に準備をすれば良いことになります。
このように、十数年というある程度長い期間で、毎月一定額を積み立てて準備するという点で、保険商品、中でも学資保険が非常に適していると言われています。

そして学資保険のもう一つの特徴は、契約者となる親御さんが万一亡くなられた場合、以後の保険料は払い込まなくても、満期には契約していた金額が受け取れるという点です。
この機能は、通常の預金にはない学資保険の大きな特徴です。
ここが、学資「保険」と言われる大きな要素になるわけですね。

 

最近はデメリットが際立つ学資保険

こうした点からも、これまで当たり前のように利用されてきた学資保険ですが、最近はその優位性が薄らいでいます。
それは、どの様な点でしょうか?ここで、現状の学資保険のデメリットについて確認していきたいと思います。

デメリット1:低い予定利率が固定されるので、インフレに弱い

学資保険を利用する大きな理由の1つに、支払った分よりも多くの金額を受け取るという点があります。
しかし、最近では予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利率)が下がっており、かつてほど金額が大きく増えるという商品は少なくなっています。

支払期間や契約者の年齢にもよりますが、満期時に110%を超える返戻率(払った保険料に対して受け取れる学資の割合)という商品はほとんど見当たりません。

具体例として、例えばA社の 学資保険を見てみましょう。
30歳の父親が0歳の子供のために加入・18歳時に300万円の学資を受け取れるプラン
18年間保険料払込:保険料¥13,470(総払込¥2,909,520)・返戻率103.1%
10年間保険料払込:保険料¥23,550(総払込¥2,826,000)・返戻率106.1%
となります。

確かに、払い込んだ保険料の総額よりも多い学資が受け取れる仕組みになっています。
更に、もし父親が払込期間中に死亡した場合でも、学資は300万円受け取れるので、安心かもしれませんね。

しかし、この返戻率、必ずしも高いものではありません。
ここで考えたいのは、この利率が18年間固定されてしまうという点です。

現在はご承知の通り、金利が低いため、保険の予定利率も非常に低く設定されています。
一般的な学資保険の利率は、将来金利が上昇しても、予定利率は変わらないままです

低金利はお金を借りるときは良いですね。
住宅ローンなどは、いかに低い利率で借りるか皆さん必死で検討します。
しかし、学資保険はその逆で、お金を運用する商品です。できたら、利率は高い方が良いですよね。
それなのに、元本割れさえしなければ良いと、103%・106%という低い返戻率でも検討してしまうのです。

落ち着いて考えてみてください。
最近は物価上昇が激しいですね。食料品も電気代も上昇しています。
仮に年間2%の物価上昇が続いたら、18年後の物価は約143%になります。
103%・106%などひとたまりもありません。
このように、予定利率を長期間固定してしまう保険は、インフレに非常に弱い商品なのです。

 

デメリット2:途中解約すると元本割れするケースが多い

学資保険は、満期日が近くならないと、多くの場合、途中解約すると元本割れしてしまします

昨今は仕事の環境も変化します。想定外に会社を退職する等、ライフスタイルの変化も多いですね。
仮に定期的な収入が途絶える時期が出て、保険料の支払いができなくなったとします。
その場合、2~3カ月の猶予期間を過ぎると、契約は失効または解除されてしまいます。
その時に戻される金額は、多くの場合それまで支払った保険料の総額を下回ることになります。

あるいは、保険料が支払えないという事情以外も考えられます。
例えば、数年後金利が上がり、他の運用商品に切り替えたいと思い、解約することも考えられます。
この様なケースでも、元本割れとなってしまうので解約を躊躇してしまいます。

現在のような低金利で予定利率の低い状況では、こうした柔軟性のなさも、大きなデメリットになってしまうのです。
利率の高い時期にやるならば、この逆になるんですがね…

学資保険自体は悪い商品ではないと思います。
しかし、現在の様な金利が低く予定利率の低い時期は、デメリットの方が多くなるということになるわけです。

 

保険会社のドアノック商品になっている点も要注意

それでも学資保険と言うと安心というイメージが根付いており、今でもお問い合わせの多い商品です。
そのため一部の保険会社では、この学資保険を「ドアノック商品」と設定し、採算度外視で返礼率を高く設定し、魅力を高めるようにしています。
特に、満期の時期を入学金等の支払い時期になる2~3月に設定できる今は、学資保険の問い合わせも多くなります。中にはキャンペーンを実施している会社もあるようです。

その様なきっかけでWEB相談が入った顧客の所に、営業職員が訪問して手続きをすることになります。
そしてその職員が、学資保険と併せて他の保険商品を提案するという流れになっているのです

最近は死亡保険も医療保険もWEBで手続きが完了する保険会社が多くなりました。
しかし、学資保険については、その様な理由で、WEBで手続きが完了する商品はほとんどありません
どちらかというと、営業職員の多くいる保険会社の方が、積極的に販売をしています。

このように、学資保険の手続きのために保険会社の職員と会うことで、余計な保険を提案される可能性が出てくる点にも、注意をしておきたいところです。

 

学資保険に代わる方法として、新NISAがお勧め

このように、昨今の低金利の中では、学資保険が優位性のある商品とは言えません。
とは言っても、教育資金はしっかりと準備をしていきたいところです。
では、どの様な方法が良いでしょうか?

最近は、学資保険に代わる方法として、つみたてNISAを活用した準備方法をお勧めしています。
いつもお話をしている、インターネットの証券会社でNISA口座を開設、その中で毎月一定額をインデックス型投資信託での積み立て投資を中心に運用していく方法です。

この方法で、仮に毎月2万円を18年間積み立てたとします。
この資金をインデックス型投資信託で分散し、20年以上といった長期間積み立てを継続すれば、一般的に、年平均利回り3~4%を期待できると言われています。

仮に運用利回りを低く見積もり、年平均2%・18年間(1年複利)で計算した場合、
総支払額:2万円X12カ月X18年間=432万円
18年後の運用資金:500万940円(115.7%)
となります。

もちろん、確約の取れるものではありませんが、高い確率で学資保険を上回る返戻率を見込むことができます。

この方法の良い点は、途中で積み立てを停止したり、ペースを上げたりするなど、柔軟に対応できることです
特に、2024年からは、新NISAの開始で、つみたて投資枠は年間120万円まで利用できることになります。
従来のNISAでは、学資等の目的で積み立てた資金を引き出すと、過去の積立分の枠は復活しませんでした。
一方で新NISAでは、引き出した分の元本分の投資枠が復活するため、再度別の目的で投資を再開することが可能になります

このように新NISAは、学資等、特定の目的の資金準備も柔軟にできる様になります。
教育資金準備にも、是非活用されることをお勧めします。

なお補足ですが、この方法の場合、学資保険には付帯する保障機能が備わっていません。
もし保障も備えた場合として、インターネット等で加入できる死亡保険を参考までに確認します。

一例として、保険会社Bの死亡保険は、
30歳加入・50歳まで死亡保険500万円:保険料は月1090円(総支払保険料18年間で235,440円)
となります。

先ほどの2%運用では、総支払額432万円に対し、18年後約500万円受け取れる想定でした。
学資保険は保険料が払込免除になるだけなので、払込期間中500万円の死亡保障があるのは学資保険より手厚くなりますが、この保険料を支払ったとしても、総支払額は約456万円であり、十分高い返戻率を確保しています。
※なお、ここではあくまで学資保険との比較として保険期間や保険金額を設定しています。
実際保険を検討する際は、必要保障額をシミュレーションして適切な保障額を算出されることをお勧めします。

 

NISAを活用する際に気を付けたいこと

NISAを活用した学資保険の代替案で気を付けたい点は、資産の変動、特に資産の急落の可能性もある点です。
長期的に利回りが期待できると言っても、それは毎年着実に得られるものではありません。
今年は5%プラスになったという年もあれば、その翌年は10%マイナスだなどという事も考えられます。

特に、満期直前にリーマンショックやコロナショックの様な事が起きれば、受け取れる資金が半分程度に減少するリスクもあります。しかしその様な場合でも、引き続き保有をすることで、資産は数年で元に戻る可能性が高いです。

NISA口座の活用はあくまで資産運用の一環であり、資産の変動は常に生じます
中には、教育資金の様な確実に使う資金は運用で準備しない方が良いというFPの方もいらっしゃいます。
もちろん、考え方は人それぞれと思いますが、私はそれほど硬直的には考えていません。

一定の資産が確保出来たら預金に移す、運用資金は余裕のある範囲で行うなど、急激な変動にも対応できる準備をしておけば、資産運用しながら教育資金を準備するという方法も現実的だと思います。

 

時代の変化により、最適な商品は変動します

学資保険は、お子様の進学の時期に一定の資金を準備できるので、わかりやすく安心な商品です。
その安心の理由の一つに、「18年後に300万円・返戻率103%」といった様に、金額の見える点が挙げられます。
また、返戻率も100%を超えていれば、「損をすることはない」と感じられる点も大きいでしょう。

しかし、18年後にその金額・その返戻率が最善である可能性は、現状では極めて低いと言わざるを得ません。
先ほど示した学費も、物価上昇が続けば1.5倍近くに跳ね上がることも考えられるわけです。

現状のような低金利が続く時期、ましてや日銀の金融緩和方針も変わろうとしているこの時期、インフレに弱い長期固定金利の運用商品は、お勧めできません
今回の学資保険のほかに、円建ての定額年金保険なども、これに該当します。

時代の変化により最適な商品は変動します。
特に学資保険・年金保険の様に長期間継続する商品は、その選択を誤ると、後々後悔する可能性もあります。

これまでの考え方で、教育資金準備=学資保険、老後資金準備=年金保険と思考停止している方はまだ多い様です。

様々な資金準備において、これまで一般的と言われてきた方法は果たして最適な方法なのか、他に良い方法は無いのか、常に時代に合わせた方法で柔軟に対応していくことが大切です。

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