こどもの教育費はどのくらいかかるのか?必要な資金を「見える化」する

夏頃は50代の方でリタイア後のライフプランをどうするかといったご相談が多かったのですが、9~10月は一転して小さなお子様を持つご家庭の、将来の学費の準備方法についてのご相談が増えています。

特にこちらでは何か特別な事をしたわけでもないのですが、相談には季節による違いがあるのでしょうか?それはよくわからないのですが、教育費はご相談の多い分野の一つです。

そういうわけで、今回はお子様のいらっしゃるご家庭には気になる、教育費はどのくらい準備したら良いか、というテーマについて考えてみたいと思います。

 

そもそも教育費は準備のしやすい資金??

ライフプランの中では様々な必要資金があります。
教育資金以外にも住宅購入資金や車・大型家電などを購入する資金、先々のことを考えれば老後資金・医療や介護に必要な資金など様々です。

その中でも教育費は、もうお子様がいらっしゃるのであれば、資金の必要な時期がある程度見通しやすい資金という事ができます。

中学受験を考えればお子様が11~12歳の時、大学進学を考えるならば17~18歳の時といった具合です。

したがって、その時期に満期が来るような学資保険などを契約されている方も多いと思います。

このように、教育費は必要になる時期がハッキリしているので、目標をしっかり立てて計画的に準備を進めたいところです。

 

では実際どのくらいかかるのか‥統計をチェック!

さて、時期は明確になるという事でしたが、では実際どの程度かかるのか、このあたりが明確になっている方は少ないように思います。もちろんお子様の進路など、そんな早い段階から決められません。

多くの方が、「希望する進路に進めさせてあげたい」と考えていらっしゃいます。
どのような進路を選ぶと、どの程度の費用が掛かるのか、早い段階で「見える化」しておくと、直前になって慌てるという事も少なくなるように思います。

教育費の目安には、文部科学省の以下の調査結果が参考になります。

幼稚園~高校:こどもの学習費調査結果の概要(平成30年)

https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf

大学:私立大学入学者にかかる初年度学生給付金平均額の調査結果について(令和3年)
https://www.mext.go.jp/content/20211224-mxt_sigakujo-000019681_1.pdf

なお、幼稚園~高校の学習費には、教材費や習い事・塾などの費用も含まれた金額になっています。

この調査の最新の統計は平成30年度(大学は令和3年度)と少し前の結果になるのですが、これによると、
小学校の学習費(年間):公立¥321,281 私立¥1,598,691
中学校の学習費(年間):公立¥488,397 私立¥1,406,433
高等学校の学習費(年間):公立¥457,380 私立¥969,911
私立大学の入学金:文科系¥225,651 理科系¥251,029
私立大学の授業料+施設利用料(年間):文科系¥963,341 理科系¥1,315,233

となっています。

これをこのまま計算すると、
小学校から高校まで公立で、私立大学文科系の場合、約884万円
小学校公立・中学高校私立で、私立大学文系の場合、約1314万円
小学校から高校まで私立で、私立大学文科系の場合、約2080万円

となります。

やはり、子供1人大学まで行かせるのに1000万円はかかるとよく言われますが、この統計からもその裏付けがされています。また、小学校から私立であれば2000万円以上となります。
小学校~高校の間に私立に通う場合、その間の学習費は2~3倍近くとなりますので、私立学校に通学させるのには、かなりの費用が生じることが確認できます。

 

ご相談でよく聞く声・・統計には表れない大きな費用も💧

このように、概算の費用は文科省の統計などからもわかるのですが、実際お子様を育てている方の声を聞くと、とてもこれだけでは済まないという声も多いです。
上記の統計の数値以外に、大きな負担になる費用の代表的には、以下のようなものがあります。

 

〇受験対策費用は私立の学費並みかそれ以上!

最近は少子化の時代になり、一部では定員割れの大学も出るなど、受験戦争はかつてほどの激しさはないかもしれませんが、それでも人気の学校は狭き門で、受験にあたり塾などの準備費用が大きくなります。

更に最近は一人っ子も多く、お子様一人に掛ける費用も相対的に大きくなる傾向があるようです。

また、先ほどの文科省の統計は全国の学校・保護者からヒアリングした結果ですが、統計の母数に対して首都圏のデータ数が人口比よりも相対的に少なくなっています。首都圏では中学から私立に進学する割合が多く、先ほどの統計データは実態に合っていません。

先日、私立中学に合格したお子さんの親御さんに「これから学費が大変ですね」と話したところ、「いや塾代と比べたらむしろ安くなりますよ」とおっしゃっていたのが印象的でした。
受験生がいると、夏期講習20万・冬期講習10万円といった単位でどんどん出費があります。
この言葉が受験費用の実態を表していると思います。

公立の小学校に通っていて、もし中学受験をするのであれば、小学校5年生時に50万円・6年生時に100万円程度、また大学受験の際も同様に高校2年生時に50万円・3年生時に100万円程度の費用を見込む必要があると思います

 

〇部活に留学‥学生時代に何に打ち込むか

また別のご家庭で、先日お話した私立高校に通う保護者の方は、お子様がラグビー部で活動しているとのことでした。
ある程度強豪校のようで、大会の遠征費用や合宿代がかなり負担になるようです。

しかし、子供が熱心に活動する様子を見ると、ここを削るわけにもいきません。
このような部活の活動費や、種目によっては用具にかかる費用も大きくなります。
強豪校であれば年間数十万の活動費を見込む必要があるでしょう。

また、学生のうちに語学留学などの経験をさせたいという声も多いです。
ここ数年は新型コロナの影響で海外渡航がほぼ不可能でしたが、今後は留学する学生も増えてきそうです。
一方で、円安や物価上昇の傾向は今後も続きそうで、必然と留学にかかる費用も増加する傾向があります。

訪問先や期間にもよりますが、こうした費用を数百万円見込んでシミュレーションするご家庭もいらっしゃいます。
もちろん、こうした費用をどこまで準備するかは各ご家庭の考え方だと思いますが、もし準備をするという場合は、親の世代が学生時代に海外渡航した感覚では到底不足するということを踏まえておく必要があります。

 

〇文系か理系か・・理系は学費が高額なうえ、半数近くは大学院へ

先ほどの文科省の統計でも、理系の大学に進学する場合は、文系よりも学費が1.5倍程度になっています。

そして、理系に進学すると大学院への進学率も高くなります。同じく文科省の「学校基本調査」の統計によると、大学院への進学率は全体では10.9%ですが、理系の大学生に関しては42%の学生が大学院に進学しています

理工系の大学院の入学料は¥201,427、授業料や施設費用は年間¥940,566となり、仮に2年間大学院に通う場合でも、200万円以上の費用が発生します。

お子様がまだ幼稚園や小学生のうちから文系か理系かなどと考えてもまだわからないことが多いでしょう。

中には自分は文系の家系だから、とか、親が文系だから文系などと考える方もいらっしゃいますが、こればかりはわかりませんね。ちなみに私の両親はどちらも理系でしたが、私の兄弟はみな文系でした。

理系に進む可能性があれば、大学の学費も高額になる上、大学院に通う費用もあらかじめ見込んでおく必要があるかも知れません。

 

〇大学合格してからも大変・・自宅外から通学の場合は多額の仕送り費用が

東京私大教連「私立大学新入生の家計負担調査」2021年の調査によると、自宅外の大学へ通学するにあたり、大学の入学にかかる費用の平均は約302万円・毎月の仕送り平均額は¥86,200となっています。

入学にかかる費用には入学金も含まれているのでその分を差し引いても、自宅外から通学の場合、在学4年間として更に500~600万円の費用負担が生じます。

地方在住などで自宅からの通学が現実的でない場合は、こうした費用も発生する可能性が高くなります。

 

ライフプランを検討する上での教育費のめやす

これらを踏まえ、ライフプランを検討する上で、お子様一人あたりの教育費の目安は、おおむね以下のようになります。

 〇小学校~高等学校の12年間合計(大学に進学する場合)

小学校から高校まで公立 600~650万円

小学校公立・中学高校私立 1100~1200万円

小学校から高校まで私立 1700~1800万円

〇大学4年間

私立文系 400~450万円

私立理系 550~600万円

私立理系+大学院(2年間) 850~900万円

自宅外加算(4年間)500~600万円

 

物価上昇も考えて計画を

今年に入り物価上昇が顕著になってきましたね。日常の生活費や食料品など、あらゆる物価が上昇しています。

この影響は将来的に学費にも反映されることを見込んでおく必要がありそうです。

今年は急激に物価上昇率が2~3%となりました。仮に2%の物価上昇が10年間続くと、10年後には約22%の物価上昇となります。100万円だったものは約122万円になる計算です。

もちろん、物価だけが10年間2%上昇することは非現実的かもしれません。収入も金利も長期的には上昇する可能性もあります。しかし、現状では所得の増加や金利の上昇気配がありません。

そのような中、学費の準備のため、仮に利率が0.001%などという普通預金に預けていては、この物価上昇に追い付きません。

また、以前は学資保険を利用する方も多かったと思いますが、最近は予定利率も低いため、こちらも物価上昇に追い付くことができない恐れもあります。

目安として、5年以内に必要になる受験費用や学費などは、低金利ではありますが、定期預金などリスクのない場所で管理するのが良いでしょう

一方で10年近くかそれ以上先で必要になる大学への進学資金などは、今後の物価上昇を見込んで、ある程度運用しながら準備することが必要です

その場合でも、運用先を一か所に偏らせることなく、分散してリスクを減らして準備していくことが大切になります。

お子様の教育費は、時期をずらしたり予算を削減したりする事が難しい資金です。

もちろん、どうしても不足する際はローンを組んだり奨学金を借りたりするなどの方法もあります。ご家庭によっては親御さん(お子様から見たら祖父母)に頼るという方も多い様です。

いずれにしても、教育費についてはどの程度の資金が必要になるか早い段階で確認をして、他の資金よりも優先して、計画的に準備しておくことをお勧めします。

 

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