今週気になった日経新聞記事より(2020.11.29)

 危機下の株高、IT主導 NY株初の3万ドル(11月26日)

米ダウ工業株30種平均が24日、史上初めて3万ドル台に乗せた。巨大IT企業がけん引する産業構造の転換で、2万ドルをつけた2017年から4年弱で1万ドル上昇している。

11月は日本でも株高が進み、日経平均も29年ぶりと言われる高値更新をしています。
新型コロナウイルスの感染が再拡大しているにもかかわらず、株価は急ピッチで上昇しています。
ことしの3月、未知のウイルスの影響で不安が広がり、株価が大暴落しました。それから年内にその暴落を取り戻すどころか、それ以上になるとは、とても予想できなかったことです。
この株高は私たち投資家にとっては有難いことですが、このような場面も冷静に構えておく必要がありそうです。

まず、この状況はあくまで株価の話。記事にもありますがGDPなどの実体経済を伴っていません。
現在は各国とも緊急財政出動をしており、市場には大量の資金が供給されています。
そこに低金利政策も伴い、運用先を失った資金が株式市場に流入していると言われています。
今の株高はこうした環境が整っているのが要因で、これだけ急ピッチの上昇後は、今年3月ほどの状況はないにしろ、調整の入る可能性も考えられます。

また、米ダウ工業株は巨大IT企業の影響を受けますし、日経平均も値がさ株(株価の高い株)の影響を受けます。
あたかも株式相場全体の指標の様に取られますが、一部大手企業の平均に過ぎないと考えておく必要があります。
また、「3万ドル」「史上初」と言われると目を引きますが、金額は単なる通過点ですし、金銭価値の異なる過去と単純比較はできません。
同様に日経平均も29年ぶりなどと言われますが、その時はバブルの異常時です。ちなみに当時の最高額は38000円台ですから、当面その記録を更新はできません。いずれにしても、大台突破、○○ぶり、史上初、などの表現に惑わされないようにしましょう。

そして、新型コロナの感染拡大が広まる中、先行き不透明で不安な世の中が続いています。
このような時は特に、市場はニュースに過剰に反応する傾向が強くなるように思います。
最近の上昇相場の大きな要因とはワクチン開発です。このコロナの閉塞的な状況の中、ワクチン開発は大きな望みですね。
米国のファイザーやモデルナといった企業のワクチン開発が順調に進んでいるという報道の度に、コロナの感染が収束に向かうという思惑が膨らみ、株式は買われています。

米大統領選の際もそうでした。開票作業に入った頃は動きがありませんでしたが、バイデンの勝利宣言が出た頃に相場は大きく上昇。先の読めない不安心理の中では売買を控えていたけれども、先の見通しが見えたところで不安心理が後退し、買いが多く入ったという事が考えられます。

このように、現在の様に先行き不透明の世に中では、先が見通せるようになったニュースに過剰に反応しやすいという事を知っておくと、今の動きも少しは冷静に見ることができるのではないでしょうか?

いずれにしても、短期的な値動きから利益を得る「投機家」であれば別ですが、将来のためにじっくりと長期運用を心がける「投資家」ならば、こうした急激な動きの中でも、冷静でいることが大切な事ではないか思います。

 

出産一時金50万円に/不妊治療の保険拡大、22年度に(11月27日)

自民党の“出産費用等の負担軽減を進める議員連盟”が27日の会合で、出産一時金の増額を求める提言をまとめた。
厚生労働省は2022年度に不妊治療の保険適用を拡大する方針。現在は保険適用外の体外受精や顕微授精の保険適用を検討する。

現在、出産費用の全国平均は50万5759円という事で、50万円を上回っています。東京都では平均62万円にもなるとのことです。先日お客様が無事出産されたのですが、その方も緊急縫合などがあり、60万円近くになったとのことです。
出産一時金は健康保険加入者が出産した際に子供一人当たり42万円受け取れる制度ですが、実際に要する費用と比較すると不足しています。

またこの日は、不妊治療の保険適用拡大に関する記事もありました。現在は不妊の原因が確定している場合は保険が適用されています。一方、原因不明の場合に行う体外受精や顕微鏡で精子を卵子に注入する顕微授精は健康保険適用外ですが、これについては現在公費で補助が行われており、今後この部分が保険適用される方針です。

私もたまに若い相談者のお話も聞きますが、現在子供を産む親世代は就職難であり、非正規雇用者も多い世代です。
また会社に勤めていても必ずしも好待遇ではなく、転職を繰り返す人もいます。その上、奨学金の返済をしながら家計をやりくりしている人も多いです。
20代の結婚したばかりの夫婦が、老後を心配してライフプランの相談に来るのが今の日本の現状です。

このように多くの若い夫婦が将来不安を抱えています。また、超高齢化が間違いなく進行する日本では、次の世代が社会保障を担う事となり、どうしても子供たちに明るい将来の展望が開けません。
また、50歳時未婚率も男性23%、女性は14%と高くなっています。それは何が原因でしょうか?

昨年の出生数は初めて90万人を割り込み、今年も新型コロナの影響で84万人台と大幅減少すると言われています。
出生率の減少に歯止めをかけるのは難しいことです。出産一時金の助成が増えたから子供を産もうと考える人も少ないでしょう。
不妊治療の助成は一定の効果があるかもしれませんが、一気に出生率を高めるほどの効果は見込めません。

今回の出産一時金や不妊治療への助成拡充、また幼児教育や高等教育無償化なども行われていますが、こうした直接的な施策も大切だと思います。
しかしそれと同時に、例えば高齢者から若い世代への資産移転をしやすくする、若い世代へ金融教育を充実させ不安を軽減させる、高齢者富裕層からの徴税強化する、など、総合的に対策を取って根本的な解決を目指していかないと、この状況はなかなか改善していかないのではないかと思います。

 

マイナポイント、期限内のカード申請で付与(11月23日)

マイナンバーカード所有者向けの消費喚起策“マイナポイント”の付与対象を広げる。現行制度の要件である2021年3月までの「カード取得」を「カード発行申請」に緩和する。先着4千万人の枠は1千万人分追加を検討する。

今年9月に導入されたマイナポイントは、マイナンバーカード普及を目指し、マイナンバーカード保有者に、指定のキャッシュレス決済での買い物毎に25%のポイントを付与する制度です。
マイナンバーカードは昨年までは保有するメリットがあまり感じられませんでしたが、今年に入り、定額給付金を受け取るときも手続きが簡単だという事が広がり、認知度が高まったように思います。
そして今回のマイナポイント制度により、申請者数が一気に増加しています。そのためこのマイナンバーカード、今は入手するのが難しいプラチナカードとなりました。

私の住む横浜市港北区の事例ですが、5月の連休明け頃に交付申請書を出して、交付通知書が6月中旬に到着しました。そして新型コロナの影響で区役所が密にならないよう受領日の予約を入れるのですが、私が見たときは予約可能な最終日の7月31日しか空いておらず、この日を予約して受領、申請~取得まで2カ月半かかりました。

また、私の妻は8月末に申請、10月下旬に交付通知書が届きましたが、受領予約が40日間すべて×で予約を入れることができません。現在は1月8日まですべて×とのことです。平日の午前中に限り、予約外受付をしている様ですが、そんな不確定な待ち時間をかけるほど、時間の余裕はありません。コンサートチケットでもあるまいし、なぜ国が推奨するものを受け取るのにこのような状態が続くのでしょうか?

我々の場合はスマホやPCも使えるので何とかなりますが、高齢者や障害者が受け取るとなると至難の業です。
また原則役所で本人が受け取るという仕組みなので、仕事を休めない人は大変です。こうした現状を国はどこまで把握しているのでしょうか?

このような状況で「カード発行申請」でマイナポイントを利用できるようになれば、申請した後受領を放置する人が多発するのは目に見えています。それでは早期にマイナンバーカードを普及させるという目的から本末転倒になってしまいます。

マイナポイントの付与対象を緩和する前に、受け取りやすい環境整備をして受領者を増やすことが先決です。そうでないとマイナポイント自体が意味のない施策だったということになりかねません。この点はもう少し再考してもらいたいものです。

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