資産運用を始めない方がよく持っている誤解を解く

一昨年の「老後2000万円問題」、昨年のコロナショックによる株式相場の急下落からの上昇をきっかけに、特に若い人を中心に、資産運用をスタートしようとする人が増えています。
昨年はネット証券口座の開設数は過去最大の伸びとなりましたが、その多くが20~30代の若い世代の口座開設が中心だという事です。

一方で、特に40代以上の方は、資産運用の必要性はなんとなく理解していても、実際スタートするという人はまだ少ないようです。そこには、過去の経験に基づく特有の考え方や誤解が潜んでいるように思います。

資産運用と一口に言っても様々なものがありますが、お勧めしたいのは、手数料の安いインターネット証券会社で、日経平均・米国S&P500など主要な指標に連動するインデックス型の投資信託を中心に、いくつかの銘柄を長期的に保有する「長期分散投資」です。本当は多くの方にこの方法を取り組んでいただくと良いと考えていますが、まだスタートに踏み切れない方も多いようです。

これまで資産運用をしていない方にお話を伺うと、
「忙しい」
「難しそう」
「お金が無い」
「損するのはイヤだ」
といった理由を挙げる方が多いです。

正直、「忙しい」と言われると、元も子もないような気がしますが、その「忙しい」の一部も含め、これらの理由は、多くが誤解や思い違いをしているケースも多いです。

今回は、日頃の相談から、特に40代以上の方が資産運用をなかなかスタートしない理由や、誤解して認識されている事について、整理してみたいと思います。

 

「忙しい」という人にも、その中身はいろいろ

「忙しい」という理由には、様々な意味が含まれているように感じます。これだけでは本当の理由はわかりません。
そもそも、お金や運用の話なんて聞きたくない、興味が無い、考えたくもないとか、入り口でシャッターが閉まっている方は仕方ありません。しかしそこで、もう一歩踏み込んで聞いてみると、本当の理由が出てくることがあります。

○平日に銀行や証券会社に行く時間が無い

平日の日中に金融機関に行っていろいろ手続きをする時間が無いという方もいらっしゃいます。確かにお仕事をしている方でしたら、それが普通なのかもしれません。
しかし、口座開設にわざわざ金融機関に出向く必要はなく、本人確認書類とマイナンバーさえあれば、口座開設はPCやスマホでできてしまいます。もちろん、一時的なシステム停止時を除けば、24時間365日受付しています。
むしろ、金融機関の窓口に行って手続きをするのは、余計な金融商品を勧められたり、手数料が高くなったりと、あまりお勧めできません。インターネットで取引ができる証券会社をお勧めしたいと思います。

○運用商品を研究する時間が無い

運用する投資先の情報を集めて研究する時間など取れないという方もいらっしゃいます。
もちろん、研究は深めた方が良いかもしれませんが、大まかな経済情勢がわかれば、投資信託では、例えば「日本株」「米国株」「国内債券」「先進国債券」といった、ざっくりとした運用先を選ぶことができるので、基本的な経済情勢を把握していれば問題ありません。

個別の会社の株を買うのであれば、その会社の業績や将来性を研究する必要があるかもしれません。しかし、今回推奨する「長期分散投資」であれば、普通に社会人として生活をしていて、ネットニュースや新聞は定期的にチェックするという方であれば問題はないでしょう。

○経済情勢などチェックしている余裕はない

日常的に経済情勢をチェックして売買をしていかなければならないと思い込んでいるケースがあります。しかし、長期で運用することを前提に、しっかりと幅広い資産に分散して運用すれば、毎日のように値動きをチェックする必要はありません。せいぜい月1回程度ネットで残高を確認する程度で良いでしょう。

ほったらかしと言うと言い過ぎかもしれませんが、実際売買など行わなくても、長期的に運用することで、運用成果は出てくる可能性が高くなります。むしろマメに売買することで、手数料を多く負担したり、値下がりタイミングで売却して損失を確定させたりしてしまうこともあるのです。

 

このように、「忙しい」にも、元も子もない理由から、少し誤解が解ければ問題ないというものまで、多くのケースが考えられます。こうした誤解を解くだけの時間さえあれば、次のステップに進むことができるのではないかと思います。
では次に、忙しい以外の理由について、見ていきたいと思います。

 

「難しそう」と思う人は、投資=株式投資と思っている?

資産運用は難しそうと思っていらっしゃる方も多いです。
そのような方のお話を聞くと、株式投資と思い違いしている場合もあります
投資する個別の企業について研究し、値動き等を見ながら売買しなければいけないと考えたら、確かに難しいでしょう。

しかし、「長期分散投資」の運用先は、先ほどもお話ししたとおり、個別の株式を購入するものではありません。
最初に多少仕組みを学ぶ必要はありますが、専門的な知識などなくても、投資をスタートすることはできます。
そもそもの運用方法について理解してもらえれば、難しさのハードルも大きく下がるような気がします。

もう一つ、難しそうと考える方は、自分が利益を上げる前提でいるケースです
もちろん、投資や運用で利益を上げることは大切なのですが、そう簡単に短期間で大きな利益を上げられるものではありません。100万円投資したら確実に1年で110万円になると考えていたら、それは難しい話です。

成果を出すにはどうしても時間がかかります。それも10年、20年という単位で考える必要があります
「長期分散投資」は、長期間でコツコツと取り組むことで、結果が出てくるものだと理解することが必要だと思います。

 

「お金が無い」場合は、積立投資からスタート

運用や投資などというと、何十万、何百万もお金が必要だと考える方がいらっしゃいます。しかし、それも大きな誤解です。

確かに、家計が赤字続きで、貯金を取り崩しながら暮らしているという方であれば、投資よりもまずは家計の再生に取り組むことが先決です。借金があったり、直近で学費など大きな支払予定があったりする方もそうですね。

しかし最近では、たとえ手元のお金が無くても、積み立て投資で、月1000円といった少額からスタートすることもできますし、毎日100円といった貯金箱感覚で始めることもできるのです。

そして成果が見えてくると、更に金額を増額したいという意欲もわき、必然と家計の節約にもつながるものです。

いま貯金が無くても、可能な金額からスタートして、徐々に金額を増やしていくという方法を取る方がほとんどです。
「長期分散投資」は、「長期分散積立投資」にすることで、更にスタートするハードルは低くなります。

 

「絶対に損をしたくない」という人は、考え方のクセを知ることから

○人間は損をするのが大キライ

運用をしない方には、びた一文損をしたくない、自分の資金が1円でも減るのは耐えられないという方もいます。
これはその方の考え方やこだわりなので、ある意味仕方ないかもしれません。
資産家で、将来の生活に不安が無いレベルの資産を保有する方ほど、こういう方が多い気がします。

はい、もちろん無理に運用をすることはないのですが、人間はそもそも、得をした喜びよりも、損をしたショックを大きく感じる傾向があることが証明されています。行動経済学の有名な理論で「プロスペクト理論」と言われるものです。

仮に運用で1万円損失を出したときのショック度は、1万円利益を得たときの喜びの約2.5倍程にもなると言われています。同じ1万円なのに不思議なものですね。

このように、人間はそもそも損をするのが大キライな生き物です。このように、最初から損失を回避したいと考える傾向があるものだと知っておけば、考え方も変わるでしょうか?どうでしょう?

「長期分散投資」に取り組んでも、リーマンやコロナショックの様な事が起これば、当然資産の評価額がマイナスになることもあります。そのような時に「プロスペクト理論」の通り、損失のショックに耐えられず運用を止めてしまえば、損失を確定することになるでしょう。
しかし、その様な大きな変動があった場合でも、数年後には回復するということが過去の事例ではほとんどです。やはり、ある程度の損失を受け入れる柔軟な心構えも必要です。

○過去の経験が影響していることも

また、損をしたくないという方には、過去投資で損をした経験があるという方も多いです。
日本は30年前にバブル崩壊を経験し、いまだ当時の日経平均株価の最高値をいまだ更新できていません。
こうした低成長の時期に運用をしていた50代~60代の方は、投資の成功経験が少ないと言われています。
それは、金融機関の言いなりに短期売買を繰り返してきたのも要因の一つです。
「長期分散投資」はこうした手法とは異なります。
短期的に売買を繰り返すのではなく、じっくり取り組む運用姿勢を取れば、成功する確率も高くなります。

 

「長期分散投資」の考え方をこれからも広めていきます

このように、資産運用を始めない理由も様々ですが、何事も新しいことを始めるのは抵抗があるものです。

私は別に投資信託を販売する業者ではありませんが、低金利が続き、今後物価上昇や社会保障制度の縮小が見込まれる日本においては、1人でも多くの方に、この「長期分散投資」に取り組んでいく必要があると考えています。

もちろん、家計や保有資産の状況はいろいろであり、人それぞれ考え方やこだわりもあるので、皆が必ず取り組むべきものとまでは考えません。

しかし、少なくとも誤解をしている人、まだ運用についての話を聞いたことが無い人には、なぜ今まで資産運用をやっていないのか、どの様なイメージを持っているのか、といったことを、今回整理したことを踏まえながら積極的にお伝えしていきたいです。

今回の記事によって、そうか、誤解していたなと気づいていただき、資産運用に興味を持っていただける方が増えれば良いと思います。

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