よくある「相続」についての勘違い

最近は相続についてのご相談も多くなってきました。
年明け早々には「父親が相続について考え始めたらしいので、話を聞いてもらえないか」というご相談もありました。
コロナ禍で先々の事を意識されたのか、ご家族との関わり方も変わったのか。理由は様々でしょうが、昨今の状況で相続を意識をする方が増えているようです。

一方で、最近は相続に関する情報があふれ、多くの知識をお持ちの方もいらっしゃいます。
しかし中には、法律について勘違いして解釈している方もおり、場合によってはそのまま相続が発生したら、思ってもみないことが起きそうなケースも見られます。
今回は、実際にありがちな相続に関する勘違いについて、お話をしていきたいと思います。

 

勘違い1:法定相続通りに相続しなければいけない

民法では法定相続割合が定められています。
例えば、Aさんが亡くなって、Aさんに配偶者と子供が二人いた場合、法定相続割合は配偶者1/2、子供1/4ずつという割合が定められています。しかし、これが法定だからこの割合で分けなければいけないと考えていらっしゃる方がいますが、全くその様なことはありません。

遺言が残されていれば遺言の通りになりますし、また遺産分割協議で法定相続人全員が合意すれば、例えば配偶者にすべての財産を相続するといった事も可能です。むしろ不動産など、分割しにくい財産を相続する場合、法定相続割合で相続する方が難しくなるでしょう。

この法定相続分は、相続税の計算をするときに、法定相続割合で分割したと仮定して相続税の総額を算出したり、遺産分割されなかった不動産を、便宜的に法定相続割合で共有名義にする場合に使います。また、法定相続人には、法定相続分の1/2の資産が遺留分として最低限保障されていますが、その計算根拠になるものです。

 

勘違い2:配偶者は相続税がかからないから相続税の申告は不要

配偶者に相続した分はかなり高額でも相続税がかからないと考えていらっしゃる方も多いです。
これは必ずしも勘違いではありません。
配偶者は法定相続分または1億6000万円のうち安い金額までは相続税がかからないという規定があり、これを相続税の配偶者の特例とされています。したがって、余程の資産家でない限りは、相続税が発生しないという点では正解になります。

ただしこの特例を適用する場合には、相続税の申告をしなければなりません。
仮にこの特例を使用することで相続税が課税されなくても、特例を適用することで相続税がゼロになるという申告書を提出する必要があります。

これと同様に、同居している親族に居住用不動産を相続した場合、一定の範囲内でその土地の相続税評価額が8割減となる小規模宅地の特例という特例もあります。こちらも特例適用後に相続税が課税されない金額となっても、申告は必要になります。

これらの特例を活用して相続税がかからないから、ウチは相続税の申告は不要だと思ってそのまま放ってくと、後に追徴課税されるなどという事になりかねません。
配偶者は特例を適用して相続税が発生しない場合も多いです。しかしその場合でも、相続発生から10カ月以内に、特例を使用して相続税がゼロになるという申告書を提出する必要があるので気を付けましょう。

 

勘違い3:相続税がかかるので早い段階で子供に贈与をした方が良い

相続のご相談の中には「相続税」に関してご心配をされている方がいらっしゃいます。
しかし相続税には、一定の非課税枠があります。
相続税の非課税枠=3000万円+600万円X法定相続人の数
となりますので、例えば、配偶者と子供2人が相続人の場合、非課税枠は4800万円となります。
更に、先にお話しした配偶者特例や小規模宅地の特例を活用すると、この金額を超えていても相続税は実際に課税されないケースも多いです。

首都圏近郊に戸建ての土地建物があり、預貯金が2~3千万程度お持ちの方は相続税を意識される方も多い様です。しかし、実際に計算をしてみると、思っていたより相続税が課税されないというケースも多いものです。
(ただし、その後配偶者も亡くなり、子供達だけに相続する2次相続の場合は、相続税が増えるケースが多くなります)

それよりもご自身が病気になったり介護が必要になったりした時のために、ある程度の金融資産を残しておくことを考えるのも大切です。もちろん、相続について考えることも大切ですが、相続税に気を取られるあまり、自身が将来暮らしていくための資金が不足しては本末転倒です。現在の収支の状況と、今後必要になりそうな資金を考えながら検討をする必要があります。

(なお、贈与については「贈与が成立していない不完全贈与が多いです」の項もご参照ください)

 

勘違い4:相続発生後10か月以内に遺産分割協議をしなければいけない

相続手続きは10か月以内に済ませなければいけないと考えていらっしゃる方も多いです。
こちらも間違いとは言い切れないのですが、正式には「相続税は相続発生後10か月以内に申告・納税しなければいけない」ということになります。10カ月と規定されているのは、この相続税法の規定です。
相続税が発生しない場合は、遺産分割協議を10か月以内に済ませなければいけないという事ではありません。

しかし、先ほどの配偶者の特例を適用する場合などは、10か月以内の申告が必要になります。
また、遺産分割協議には期限がないとは言え、いつまでも手続きを放置していると、次に相続が発生したときの手続きが煩雑になる恐れがあります。不動産の相続登記などは、早い段階で手続きを済ませたが良いでしょう。

 

正しい知識で安心できる準備を

これらのお話は多くの方が何となく聞いたことがあるかと思いますが、実際は勘違いして捉えていらっしゃる方も多い様です。
相続に関しては、遺産分割を規定する民法と、相続税を規定する税法が適用されるので、解釈がややこしくなっています。

また、法律もたびたび見直しがされており、ここ1~2年の間でも、相続に関する民法が改定されています。
相続に関しては、亡くなったとき=相続が発生した時の法律が適用されます。
しかし幸か不幸か、人間はいつ亡くなるかわかりませんし、家族状況や保有する資産も、時の流れとともに変わるものです。

そうなると、しっかり準備したはずの相続準備も、実態に合わないものになる可能性もあります。

このように、相続に関してはこれが正解と言った準備をすることが非常に難しい分野なのです。常に最新の情報を確認しながら、必要に応じて対策の見直しをしていくことも必要になるのです。

相続に関して気になる点がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
まずは現状やご家族への思いなどのお話をじっくりと伺い、必要に応じて専門家と連携しながら、安心できる準備のお手伝いをさせていただきたいと思います。

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