想定外に早期退職した場合のマネー・ライフプランを検討する
最近、旅行業やサービス業、あるいは製造業の方で、コロナの影響で早期退職をされる方のご相談が多いです。
特に40代~50代の方の中には、退職金割増しなどの優遇制度を提示され、実質上の退職勧告を受けて退職されるケースもあります。この場合、会社都合退職という事で、一定の勤務年数があれば、失業手当も1年近く給付されます。
しかし、多くの方は定年まで働くことをイメージしており、早期退職という選択肢がライフプランに含まれていなかった方がほとんどです。多くの退職金や失業給付が手に入るとは言え、想定外の事態が発生したところであり、今後の計画を慎重に立てていきたいところです。
この様なケースは、必ずしも他人事とは言えません。特に40代後半の方は団塊ジュニア世代で就業人口も多いので、会社の希望の役職に就けず、今後早期退職を検討する機会も出てくる可能性があります。
今回は早期退職をした方々が、ライフプランを計画する上で注意したい事項についてお伝えしたいと思います。
退職金の大きな額に動揺しない
これまで長期間勤務する中で、基本的には給与とボーナスを受け取るという生活をしてきたので、退職金として一度に1000万とか2000万といった、ゼロが一つ多い単位の金額が銀行に振り込まれるという経験はあまりありません。これまで見たことの無い金額が預金通帳に記載されるのを見て、落ち着かなくなる気持ちもわかります。
しかし、本来は60代頃に退職金として受け取れたはずの金額が前倒しで支払われたにすぎません。
再就職をしても、今度退職する際に同様の退職金を見込むのは非常に厳しいでしょう。
大きな金額を手にして、つい豪華な旅行に出たり(幸い今はコロナでなかなか出掛けられませんが)、大きな買い物をしたりする方もいらっしゃいますが、ここは使い道を慎重に検討する必要があります。
もちろん、生活環境の変化でどうしても必要な物の購入や、今後のキャリアアップに必要な出費であれば良いでしょう。
まずは将来のために貯蓄や運用をする資金、使用する資金をしっかり区分けすることが必要です。
資金の運用は慎重に
まず将来のための資金。昨今は低金利なので、銀行預金に置いていても仕方ない、資金を分散して運用したいというご相談も多いです。また、一つの銀行に大きな資金を置いておくのを不安に感じる方もいらっしゃいます。こうした資金の貯蓄・運用についても、大体の計画を立てることが必要です。
まずは日常的に使う資金としておおよそ1年分の出費分を目安に確保し、それ以外は長期的にリスクを抑えた長期分散運用をメインに検討すると良いでしょう。長期分散運用については、インデックス型の投資信託で、低いリスクで長期的に成果を上げていく方法が効果的です。運用額に制限はありますが、運用益が非課税になるNISA口座も併せて活用するのが良いでしょう。
また、銀行預金に急に大きなお金が振り込まれると、資産運用のご提案という事で銀行から連絡が来ます。
銀行の話を聞くのも良いと思いますが、銀行の提案する商品は手数料が高い場合も多いです。
契約後の担当者のフォローも少なく、数年で異動してしまうことがほとんどです。
資産運用というと難しそうと考える方もいらっしゃいますが、慣れてしまえばさほど難しいものではありません。
可能であれば、インターネットの証券会社で管理・運用されることをお勧めします。
社会保険料は大きな負担
これまで給与を受け取っていた方は、そこから年金や健康保険などが天引きされていました。
しかし離職した場合は、これらも自己負担していかなければなりません。
生計同一のご家族に会社員の方がいらっしゃれば、扶養に入るという事も可能ですが、すぐに再就職を考えるのであれば、一時的に自己負担するのが現実的かも知れません。
年金は国民年金となります。2021年度の国民年金保険料は16610円です。
会社員の時は収入に応じて厚生年金保険料を負担していました。国民年金保険よりも多くの金額を支払っていたうえ、半額は会社負担となっていました。
健康保険についても同様、失業給付の金額にもよりますが、月に20万円前後の給付を受ける場合、保険料は月に2~3万円といった負担にもなります。こちらも会社が半額負担していました。
会社員時代は給与からかなりの額が天引きされると思っていませんでしたか?
しかし、会社は会社で社員のために大きな負担をしていたわけです。そう考えると、会社員という立場が以下に恵まれているか感じられると思います。
いずれにしても、失業手当は課税されないとはいえ、勤務時の収入より大幅に減少します。
そこから年金と社会保険料を別途負担しなければいけません。こうした負担が生じることも踏まえて、当面の家計収支を確認していくことが必要です。
副業やアルバイトをしている人は注意
失業手当を受け取るにあたり、副業やアルバイトをしている人は要注意です。
コロナの影響で収入が減少し、副業を始めたという方も多いと思いますが、副業をしていると失業手当の受給対象から外れる場合もあります。
まず、起業をしたり個人事業登録をしたりしている場合は対象外となります。
また、アルバイトなど一時的な就業でも、受給期間中に1日4時間以上働くと、その日は給付対象外となります。
また、4時間未満でも、副業した日の収入と基本手当の合計額が賃金日額の80%未満である必要があります。
詳細はハローワークに確認をする必要がありますが、正しく申告をしないと不正受給となりますので、注意が必要です。
次のキャリア探しの時期に
早期退職をされた方の多くは、少し休んで落ち着いてから次の仕事を探します、という方が多いようです。もちろん長い期間勤務された後ですから、多少の期間ブランクを置くのも良いでしょう。
しかし、退職後の時間の経過とともに、再就職のハードルは高まります。
再就職支援会社の話によると、それまでのキャリアにもよりますが、何もしていない場合、おおむね退職後3カ月ほど経過すると、次の就業の選考にも影響が出るという事です。
割増し退職金が出るような大手企業にお勤めだった方には、再就職で同条件の待遇の所は少ないかもしれません。
しかし、無駄に無職の期間を過ごすのであれば、ある程度の条件は妥協して、次の就業を優先させることも必要ではないかと思います。
一方で、今は「LIFE SHIFT」と言われ、キャリアチェンジをすることは普通の事です。
再度学校に通って通信教育を受けたり、新しい資格を取得したりするなど「学び直し」をするには絶好の時期です。
しっかりとした計画を持って、この期間で資格を取るとか、ボランティア活動で見聞を広めるとか、積極的な活動に取り組んでいくのも良いと思います。
その際も、必要な費用や期間、その間の家計収支についてもしっかり計画しておくことが大切です。
早期退職後の活動は人それぞれ
これまで私のところにご相談者の方々も、その後の活動はそれぞれです。
ある方は離職後1カ月少々で、収入は下がりますが自分の趣味を生かせる仕事を見つけて、すぐに再就職した方がいます。
また別の方は、支援会社から求職票を収集したものの、給与等希望の条件が無いからと、なかなか動き出せない方もいます。
また更に別の方は、この機会に同居する親御さんの事を考えてリフォームをするという方もいました。
どの方も、コロナが無ければ前の会社で何事もなかったかのように仕事をしていたはずです。
予期せぬコロナの影響で人生の転機を迎えた方も多いですが、その後の行動も様々です。
これからも社会の大きな変化はいつ訪れるかわかりません。
今の仕事が継続できなくなったときにどのような状況になるのか、その場合のライフプラン・マネープランをある程度想定しておくことも、これからは必要になってくると思います。