今後のライフプランで検討したい「サイドFIRE」という考え方

「FIRE」という言葉を聞いたことがありますか?

火事のことではなく、缶コーヒーの事でもありません。
FIREとは、欧米で広まったライフプランの考え方、「Financial Independent, Retire Early」の略で、「経済的に自立して、早期リタイアする」ことを指します。

この考え方は、20~30代の若い方を中心に、数年前から日本でも注目されるようになりました。
特に株式市場が好調であった一昨年~昨年半ばあたりまではSNS等で良く聞くようになりました。
しかし最近は株価も低調な上、物価高騰なども激しくなり、やや下火になったようです。

もっとも、「経済的に自立して、早期リタイアする」などという考え方は、既に20~30年間会社で仕事を続けてきた方にとっては、理想的ではありますが、非現実的な考え方かもしれません。
住宅ローンを抱え、こどもの学費も用意しなければならない子育て世代の方にとっては尚更でしょう。

このFIREという考え方、確かに、よほど資産のある方でないと実現のハードルは高いです。
しかし、完全FIREはムリでも、低収入でもやりがいのある仕事を続けながら、経済的自立をする「サイドFIRE」というスタイルであれば、より実現の可能性が高まってくると思います

今回は、最近広まりつつある「FIRE」という考え方と、完全FIREまでいかなくても実現可能な「サイドFIRE」を目指す方法について、確認してみたいと思います。

 

「FIRE」とはどのような状態?

改めてFIREとは、経済的に自立して、早期リタイアするというライフプランになります。

経済的に自立をする前提として、一定の資産を確保し、その資産から得られる収入を確保することが条件となります。
ただ単に、大金を保有する人が手元の預金を切り崩しながら生活をするケースとは異なります。

このFIREを目指すには、一般的に、年間の出費の25倍の資産を確保することが条件と言われています。
例えば、月に20万円・年間240万円の出費で生活をする場合、6000万円の資産を確保することが目安です。
その資産から、年4%つまり240万円の運用利回りを得て、それを財源に生活するというものです。

この4%とは、一般的に株式や不動産などの資産から得られる標準的な運用利回りの目安です。
もちろん、状況によって大幅なプラスになることもあるし、マイナスになることもあります。
しかし、過去数十年の統計を見ると、平均約4%の利回りは確保できると言われています。

もちろん、将来の物価上昇や、大病や介護状態になるリスクを考えると、もう少し余裕が必要かと思いますが、
仮に1億円以上の資産がある様であれば、FIREは十分実現できると考えても良いでしょう。

 

それよりも現実的な「サイドFIRE」とは

とは言っても、6000万円とか1億円とか、多くの方にとっては非現実的な数字かも知れません。
そこで考えてみたいのが、「サイドFIRE 」というスタイルです。
サイドFIREは、完全にリタイアはしません
資産収入を得ながら、低収入でもストレスなく自分のペースでできる仕事をし、生計を立てていくという方法です。

例えば、先ほどと同様、月に20万円・年間240万円の出費で暮らすことを考えた場合、月10万円程度を仕事で確保、残り月10万円・年間120万円分を資産収入で確保すると考えます。

もちろん、月20万円で暮らすのは厳しいかもしれませんね。その場合は、例えば月30万円の出費ならば、月に20万円の仕事の収入を得て、残りを資産収入と考えても結構です。

すると、いずれの場合も、先ほどの考え方であれば、3000万円の資産で実現することが可能です。
3000万円でも大きな金額ではありますが、完全FIREよりもハードルは下がったのではないかと思います。

実際のところ、FIREを実現しても、仕事もせず1日中ゴロゴロしているというのも現実的ではありません。
そのように考えると、多くの方にとっては、この「サイドFIRE」を目指す方が現実的かと思います。

 

サイドFIREの実現に必要なもの

最近は、早期退職を検討するライフプランのご相談も増えています。
そのような方にもお勧めできるのが、このサイドFIREのスタイルです。

ただし、このスタイルを実現するにはそれなりのプランニングが必要です。
ここでは、サイドFIREへの道について、段取りをご案内したいと思います。

 

○まずは頭の中を整理して、自分の目指すものを確認

まずは、なぜサイドFIREを目指したいのか、あるいは、〇歳にはこんな生活をしていたい!といった考えを整理します。
仕事のストレスがあるから、自由な時間が欲しいから、といった消極的な理由では実現は難しいです。

10年後には個人事業で開業したい、20年後には田舎暮らししたい、といった理想があると良いですね。その様な前向きな考え方が、サイドFIREを目指して動くエネルギーになります。

もちろん、すぐに見つからなくても、サイドFIREを目指す過程で見つければよいかと思います。
いずれにしても、「・・したい」というモチベーションが、実現の可能性を高めると思います。

 

○現在の金融資産や今後の収支の見込みをチェック

次に、現在の金融資産の状況と今後の収支状況の見込みを確認します。
何の根拠もなく、3000万円確保する!という目標を立てても、実現できなければ意味がありません。
家族の状況や収支の状況を精査し、現実的なサイドFIREのスタイルを設定します。

この時に、受け取れる年金の見込み額や、持ち家か賃貸かでも必要な資金は変わります。
先々の収支の見込みも併せて確認しておくことも必要です。
会社員の方は、早期退職することで、将来受け取れる年金が減ることも考えておく必要があります。

もちろん、実現できるタイミングは家庭の状況によって異なります。
大まかな目安として、会社員の方で、40歳で1000万円・50歳で2000万円の資産を保有していれば、
レベルの差はあっても、60歳になる前にサイドFIREのスタイルを確立できる可能性は高いでしょう。
自分のスタイルに合わせた、現実的な目標を掲げることが大切です。

 

○資産所得確保のめどをつける

そして、サイドFIREの仕組み作りに何よりも必要なのは、資産所得です

資産所得には、以下のようなものが挙げられます。
・株式や金融商品からの配当金
・不動産からの家賃収入

また、個人の能力も広い意味での資産と考えた場合、以下のようなものも該当するかも知れません。
・SNSやブログからの広告収入
・著作物からの印税

まずはこのような、労働以外から得られる収入を確保する活動を徐々にスタートする必要があります。

少なくとも、金融資産は貯蓄しかないという方は、株式や投資信託での資産運用をスタートする必要があります
サイドFIREに必要な原資を確保する過程でも、資産所得の確保が必要になるからです。

いきなり大金が入ったからと、慣れない状態でFIRE生活に突入してもうまくいきません。
サイドFIREできる段階までに、資産所得を安定的に確保できる状態にする必要があります。

ただし、いずれも簡単なものではないかもしれません。
株式の配当金を得るなどは比較的ハードルが低いかもしれません。
一方で、不動産投資は、初期費用や多額の借入金が必要なケースも多く、綿密な計画が必要です。
それぞれ自分のスタイルに合った方法で、準備をすることが大切です。

 

○ムリなく続けられる仕事のめどをつける

サイドFIREは、資産収入だけでなく、一定の労働収入の確保も必要です
確保したい生活費の額に合わせて、目標の月収・年収を設定します。
フルタイムで働く必要はないのですが、それでも仕事で収入を得るにはそれなりのスキルが必要です。

やりたい仕事をするのに必要な資格を取ったり、状況が許せば副業を始めたりしても良いでしょう。
また、会社以外で働くとなれば、会社以外のコミュニティの形成も必要です。
早い段階から、長く続けられる仕事をする土台作りを始めると良いでしょう。

 

○定期的な計画の点検を

サイドFIREを目指すには、一般的には数年~十数年といった長い期間が必要になります
その間には、家庭の状況の変化や社会情勢の変化も多くあります。

特に昨今の様に、大幅に物価が上昇する場合は、将来の生活費の見積額を引き上げる必要もあります。
状況によっては、目標時期や金額を変更する必要があるかも知れません。

常に計画の進捗状況と、周囲の環境を確認しながら、計画の修正をしていくと良いでしょう。
いずれにしても、焦ることなくゆっくりと目標に近づいていければ良いと思います。

 

サイドFIREはこれから広まるスタイルに

最近は、「LIFE SHIFT」という考え方も広まりました。
必ずしも、定年まで会社で働き続けるだけのライフスタイルが一般的なものではなくなると思います。

そうした中、「サイドFIRE」のスタイルは、今後更に広まっていくでしょう。
自分のやりたい仕事、やりがいある仕事で社会の役に立つのは幸せな事だと思います。
それが、時間に縛られることなく、ストレスも少ない状態であれば理想的ですね。

中には、お金は汗水流して働いて稼ぐものだ!などと考えている方もいらっしゃるかも知れません。
もちろん、その考え方は否定しませんが、ストレスや過労で体調を崩しては、元も子もありません。

「資産所得を確保する」というと、難しそうだし、自分には関係ない事だろうと思ってしまいます。
しかし、しっかり計画を立てて、少しだけ学んで実践すれば、それほど難しいことではありません。

私は、多くの方に「サイドFIRE」を実現できる可能性があると思います。
今後のライフプランを考えて、自分になったサイドFIREのスタイルを検討してみてはいかがでしょうか?

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