新NISA開始後初の株価大幅下落!こんな時期を落ち着いて過ごすための考え方

8月に入り日経平均株価が大幅下落、市場が大きく変動しましたね。
8月2日には2216円(5.8%)、5日には4451円(12.4%)下落。
特にこの5日は史上最大の下落幅となったとのことです。

またそれまで進行していた円安の流れも、ここにきて急激に円高が進んでいます。
7月10日に1ドル161円台を付けていたドル円相場は、8月5日には一時141円台を付けました。

その後1週間が経過し、さすがに激しい値動きは収まりつつあります
それでも、日経平均株価が42400円台のピークになったのは1か月ほど前の7月11日。
それに対し現在(8月9日の終値)は35025円なので、その時よりも約17%安い状態です。
また円相場も現在(同)は146円56銭と、ピーク時の161円より10%近く円高が進んでいます。

今年は新NISAが始待った年でもあり、資産運用をスタートしたという方も多いでしょう。
それから順調に上昇していただけに、今回の急激な変動には驚いた方も多いと思います。
もちろん、私も想定外の変動にビックリしました

 

なぜ急にこれほどの変動が起きたのか

今回の大きな変動は、日米の金融政策の方針発表がひとつのきっかけでした。
日本では、7月30~31日に、日銀の金融政策決定会合が実施されました。
そこで、0~0.1%を上限としていた政策金利を、0.25%程度まで引き上げる決定をしました
また併せて、日銀の植田総裁は、今後更なる金利を引き上げもあり得るという見解を示しました。
これが、想定されていたよりも強硬な意見と捉えられました。

またその翌日、米国のFOMC(米連邦準備理事会:米国の金融政策を決定する会合)がありました。
そこでは9月の利下げに前向きな姿勢が示されました
更に、その後8月2日に発表された米国の雇用統計の結果は、想定以上に悪化していました。
このため、米国が景気減速する懸念が広がり、米国の株式市場も大幅に下落し、金利も下がりました
そしてその流れを受けた翌週、日本の株式市場でも史上最大の下げ幅を記録することになりました。

つまりは、
日銀は思ったより早いペースで金利を上げようとしているぞ!
米国の景気は思っていたほど良くないぞ!
という、大方の市場の予想に反する発表が立て続けに起きたことで、市場が動揺し、大きな変動になったというわけです。

 

それにしても、ちょっと変動が大きすぎない?

今回の変動は、ブラックマンデー以来とか、史上最大の下落幅というレベルになりました。
30年以上ぶりと言いますが、それにしてもちょっと大きすぎはしないでしょうか?

ブラックマンデーは、今から37年前の1987年10月、ニューヨーク株式市場の株価大暴落をきっかけに広がった世界的な株価の大幅下落です。
日記平均株価はこの時3836円安・14.9%の下落となりました。

しかし、今回そんなに大変な出来事が起きたとも思えません。
少なくとも、東日本大震災・リーマンショック・コロナショックのような出来事ではないですよね。
今回これほど大きな変動が起きるとは、誰も予想できなかったと思います。

しかし、ここでは現状を冷静に見てみたいと思います。

 

1日の変動幅は大きかったが、変動規模は大きくない

もちろんこの先わかりませんが、今回の変動に関しては、既に市場は落ち着きを取り戻してきています。
確かに、1日の変動幅という意味では十数%と大きかったです。
しかし、リーマンショックやコロナショックのように、数日かけて20~30%変動したというケースと比較すれば、今回の変動は、規模は小さく、このまま落ち着きを取り戻せば、非常に短期間の出来事だったと言えます。

 

年初からの急激な上昇の反動

そもそも、今年は年初から日経平均も米国株も急激に上昇していました。
日経平均の今年の始値は33193円でしたが、7月のピーク時は4万円を超え、上昇率は20%を超えました。
5日にはこの値も下回りましたが、現在はこの額より5%ほど高い値となっています。

また、多くの方が新NISAで運用している米国株式に投資するインデックスファンドも、円安の効果もあり、多くのファンドで年初~7月の上昇率は30%程度と、急激に上昇していました。
今回の下落と円高の影響で、現在は年初の基準価格より10%程度の上昇に収まっています。
今年の前半は急激な上昇が起きており、その調整がたまたま一気に起きたと考えることもできます。

 

変動が変動を呼ぶ環境

ブラックマンデーの頃は、株式を取引する環境も、今とは大きく異なっていました。
東京証券取引所の日報を調べてみると、ブラックマンデー当日の、東証1・2部の株式売買代金の合計は約6400億円とのことでした。
一方、今年8月5日の東証プライム・スタンダード・グロース市場の合計取引額は約9兆1800億円と、取引額は10倍以上です。

株式の注文も、対面や電話で注文していた時代から、パソコンやスマホで瞬時に注文する時代になりました。
更に現在は、一定の保証金を入れて保有資金より多くの取引をする信用取引も普及しています。
コンピュータープログラムで自動的に高速で行う「アルゴリズム取引」も大幅に増加しています。

こうした状況から、1日の価格の変動幅ボラティリティといいます)は以前よりはるかに大きくなっています
特に今回の変動では、株価が一定の下落幅になると自動で売却を進めるプログラムが作動するという事例もありました。
また急激な変動で株の評価額が下がり、信用取引をする投資家が、追証(信用取引をするための保証金)が支払えず、強制決済されるといった取引も多く生じたと言われています。
そのために、売却取引が一方的に増え、売りが売りを呼び、更に下落を加速させるという事態になりました。

最近は、株価でも為替でも、ブラックマンデー以来、バブル後最高値、などと、過去と比較して何十年ぶりといってセンセーショナルにされる報道されるケースをよく見かけます。
しかし、数十年も前と比較すると、現在は環境も大きく変わっています。
そう考えると、何十年ぶりという報道にいちいち驚く必要はないのかもしれませんね。

 

・・・この様にして見ると、今回の変動は非常に短期間で、最近の環境を背景に起きたことだと思います。
うした背景を認識しておけば、今回の出来事も、驚きはしますが、冷静に対応ができるのではないかと思います。

 

それでも居ても立っても居られない人は

とは言っても、今回の変動が数年に1回レベルの急変動であったことは確かです。
今年から資産運用を始めた人などは、初めて訪れた試練といえるでしょう。

今回の下落を見て居ても立っても居られないという方。
保有する資産に対して投資する額が多すぎないでしょうか?

過去のリーマンショックの際の2008年は、1年間で50%以上株価が下落しました。
投資して良い額の目安として、「仮に半分になっても困らない額」、を目安にしておくと良いでしょう。
それを守っておけば、慌てて投資に回した資金を回収する、という必要もありません。

私の相談者の一人は、投資額が減っているのを見るのがコワいので運用額をチェックしないと仰ってました。
確かに、一度投資に回した資金は、ほったらかしで、いちいち時価額を確認しなくても問題ありません。
むしろ、それが一番落ち着いていられる方法かもしれませんね。

人間は損失を受けるダメージを過度に恐れる傾向があります
先日のブログの中で、人間は利益より損失を嫌う傾向があるという「プロスペクト理論」をご紹介しました。
人間は、1万円を得る喜びより、1万円を失うダメージをより大きく見積もります。
そのため、株価は上昇するより下落する方が、ニュースでも大きく注目されます。

その影響もあり、一度株価が下落し始めると、居てもたってもいられなくなり、投資をやめてしまう人も多い様です。
こうした人間特有の心理を理解しておくことが、冷静な判断にもつながるかと思います。

 

投資の成功の秘訣はシンプル「継続すること」

投資経験の長い人、長期分散運用で一定の成果を出している人は、むしろ今回の株価下落をチャンスと捉えます。
中には、こうした相場変動を待って資金を準備して、ここぞとばかり、バーゲンセールと言って株を多く買う人もいます。

そこまで積極的に取引をしなくても、毎月一定額を買い付ける「積立投資」を実践していれば、相場の下落時も着実に買い付けをすることができます。
そして、今回のような下落相場も、数年で元に戻ることが長い歴史の中で確認されています。
いずれショック分の下げを取り戻したとき、自分の資産も多く増えている。
新NISAでも推奨されている、長期分散積立投資は、この繰り返しです

一般的な買い物でも、モノを安く買える方がよいに決まっています。
一方で、モノを売るときは、高く売れた方が良いですね。
大きな変動が起きると、こうしたシンプルな原則を忘れてしまう方が多いです。

世界情勢は猛烈なスピードで変化しています。
一時的な相場の変動はつきものです。そのような動きに惑わされる必要はありません
今後も、今回の様な変動が起きるものとして、冷静に対応できる心の準備をしておくとよいでしょう。

投資を始めた以上は、止めることなくコツコツと継続していくことが、シンプルな成功の秘訣です。
資産運用を長い目でとらえることが、将来の良い結果につながっていくと思います。

 

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