怪しいとまでは言わないけれど、あまりお勧めできない情報の見分け方

最近は物価高騰の勢いも激しく、家計を何とかしなければ、と考える方も多いですね。
また資産運用の面でも、一昨年までは株式相場が上昇基調で、多くの方が運用成果を出せていました。
しかし、昨年以降は景気減速懸念もあり相場も低迷、保有資産も目減りしている方が多い様です。

この様な状況の時は、しっかり対策を考える人ほど、様々な情報収集をすることになります。
少しでも家計を楽にしたい、少しでも資産を増やしたい、誰でもそのように思いますよね。

しかし、情報提供側もあの手この手で目を引こうとしてくるので、注意しなければいけません。
また、取引している銀行や証券会社・保険会社などの金融機関も同様です。
これだけ情報が多いと、何が良くて何が悪いのか、判断するのは非常に難しいですね。

そこで今回は、怪しいとまでは言わないけれど、あまりお勧めできない情報を見分ける方法について、具体的事例をお伝えしたいと思います。

 

大きな数字で金利や利回りがXX%と前面に出ているのはNG

昨今の低金利の時代、SNSやPC画面の広告でも、金利X%!とか利回りX%!などと、
まず%の数字が目を引く広告があります。
この様に、X%が前面に出ている広告は注意が必要です。

先日は相談者が、とある銀行のチラシを持参されました。
それをみせて見せてもらうと、某銀行の「退職金特別プラン・スーパー定期預金・金利7%」という広告。
大きな字で目立つように7%と書かれています。

銀行の定期預金の利率は、どんなに高い銀行でも現状0.1~0.2%と言ったところでしょう。
少なくとも1%を超えるような利率はあり得ません。
ちなみにこちらのケースは、小さな字で以下の様な条件が記載されていました。

・スーパー定期3カ月:3カ月経過後はその時点の当行定期預金金利が適用されます
・定期預金で預けた金額以上の指定の投資信託、またはファンドラップをご契約いただくことが条件となります

このケース、3か月後に摘要されるその時点の定期預金金利は0.02%でした。
この場合、500万円預け、3か月後の金利が当面続くとすると、

当初3か月:500万円X7%X3/12=87500円
以降9カ月:500万円X0.02%X9/12=750円
2年目以降:500万円X0.02%=1000円

となり、1年目は88250円の利息が付きますが、2年目以降の利息は年間わずか1000円です。
500万円預けて年間1000円ですよ…(実際の受取は約20%の税金控除後の額となります)

そして問題なのは、今回のケースで利用条件となる「当行指定の投資信託」や「ファンドラップ」は、いずれも年間に手数料が2%程度生じる商品でした。

ここに、先ほどの定期とは別に、退職金を1000万円預けたとすると、年間20万円以上の手数料を払い続けることになります。
チラシの7%の数字に引き込まれ、結果的に高い手数料の金融商品を契約することになるかも知れません。

この様に、金融機関などでは、正直言ってお客様目線でない表現が、実はまだ非常に多いです。
もちろん、誤ったご案内ではないので、法的に問題があるわけではありません。
先ほどの利息の計算に方法についても、記載されています。

しかし、このチラシを見る側は、内容をよく把握して申し込まないと、こんなはずではなかったとなりかねない事例です。
私個人的には、この様な顧客目線ではない広告を出す業者に、大切な資産を預けたくないなと考えます。

銀行以外の業者でも、投資商品の案内で、利回りX%!などと記載された広告は非常に多いです。
これらもしっかり内容を確認したうえで検討する必要があります。

今の超低金利の時代、長期間にわたり、1%以上の運用利回りを約束する商品は存在しません。
少なくともそのような認識を持って、判断をする必要があります。

 

銀行・証券会社・保険会社の担当者が勧める商品は・・?

先ほどの退職金プランは、WEBなどで一般の方にも大々的に宣伝されている商品です。
一方で、自分が取引している金融機関の担当者や支店の職員から、個別に商品を薦められるケースもあります。
以下に、代表的な事例を挙げてみたいと思います。

(事例1)銀行編:預金残高の多い顧客に、運用のための保険商品や投資信託を薦めるケース

普通預金や定期預金の残高の多い方は、預金よりも利回りが良いからと、金融商品を勧められることがあります。
この様なケースで紹介されるのは、貯蓄性の保険商品や投資信託であるケースが多いです。

確かに、長期保有して順調に運用できれば、普通預金よりも運用利回りが良くなるでしょう。
しかし、まず普通預金・定期預金などより良い利回りの商品は、元本保証ではありません。
預けた元本よりも減少する可能性があります。

また、金融機関の窓口で手続きをすると、手数料が高くなる場合が多いです。
同様の運用商品がインターネットで契約できる金融機関であれば、更に低い手数料で契約できます。
銀行で紹介されたから安心と鵜呑みにせず、他の商品・他の金融機関で購入した場合と比較することが大切です。

金融商品は長く保有することが多いです。
仮に1000万円の運用を年間手数料0.5%と1%で運用した場合、元本が変わらないとしても、10年間で50万円の差額が生まれます。

わずかな手数料の差が、将来大きな差となって跳ね返ることになります。

(事例2)証券会社が、「はやりもの運用」を勧めるケース

証券会社の担当者は、時々「はやりもの運用」投資信託を勧めてくる場合があります。
例えば、今で言えばAIや5Gなど最新の通信技術、あるいは電気自動車や脱炭素など。
これらは一見将来性があるように思いますね。

しかし、これらは既に世間に十分認知されたテーマであり、あまり目新しさは感じません。
昨年あたりは盛り上がっていたようですが、今はブームも沈静化しています。
未来永劫ブームが続くことはありません。今新しいものは、将来必ず古くなります。
そして、この様な商品はテーマ型投資信託と呼ばれますが、これらは保有する手数料が高いものが多いです。

これと同様、昨年秋頃にドル円相場が150円台になったときにドルを購入した人。
あるいは世界情勢が不安定化になり金の価格が上昇した時に金を購入した人。
この様なブームに乗って行動を起こした人は、資産を購入する際に、いわゆる「高値づかみ」になっていますね。
はやりものだから良いだろうと思考停止して、勧められたままの商品を購入するのは避けた方が無難でしょう。

(事例3)保険会社が、「貯金代わりの変額保険」を勧めるケース

最近のご相談でも非常に多いですが、「貯金代わりの変額保険」を勧められるケースが多いようです。
中には、マネーセミナーで勧められて加入したという方もいらっしゃいました。

変額保険は、契約者が支払った保険料の一部を特別勘定という別枠の勘定で運用する商品です。
その運用成果により、解約金が変動します。死亡保障は最低保証をしているケースが多いです。

こちらも、死亡保障を必要としていればまだ良いでしょう。
しかし、預けた金額が保障に回る分、貯金の代わりとは言えません。
解約金は変動して支払額を下回る可能性もあります。

また、運用として勧められたとしても、必ずしも優れているとは言えません。
投資信託等など、保障部分もなく、手数料も低い商品で運用する方が、はるかに運用効率は良くなります。

保険と言うと安心してしまう方が多いのですが、保険が資産形成に適しているのは金利の高い時期。
今は、保険と運用は切り離して考える方が現実的だと思います。

このように、金融機関毎に主な事例を挙げてみました。
もちろん、金融機関の勧める商品が、一概に悪い商品というわけではありません。
しかし、こうした商品を保有する相談者の多くが、その商品の特徴について理解されてないケースが多いです。

金融機関から商品を勧められた場合は、それなりに勧めてくる先方なりの理由があります。
その場で即決するのではなく、まず商品の仕組みをよく確認しましょう。
・・・と言っても、よくわからないにケースも多いですよね。
その場合は私達FPに相談の上、判断されることをお勧めします。

 

無料セミナー!サラリーマンのあなたに!
今なら○○ギフト券プレゼント!?

また、最近は様々な会社のセミナーの情報も目にしますね。
無料セミナーもたくさんありますし、中には参加者特典としておみやげやギフト券が提供されるものもあります。
セミナーを受ける事自体は良いことだと思いますが、どの様なセミナーを受講するか、ここでも注意が必要です。

まず、無料セミナーが、なぜ開催されているかということ。
公的機関が市役所など公共施設で実施するものであれば、まだ良いかもしれません。

しかし一方で、ホテルなど立派な会場で、コーヒーなどもご馳走になれるものもあります。
この様なセミナーは、まず、主催会社を確認する必要があります。

無料セミナーでやたらとサービスが良い物は、必ずその会社の商品勧誘があります。
セミナー内容も、その会社が取り扱う商品のメリットが感じられるような、偏った内容になっているものです。

更に確認をしておきたいのは、参加対象者です。
サラリーマンの方向け、などとなっている場合、不動産投資セミナーであることが多いです。
不動産投資には借入金が必要であり、サラリーマンであれば借入の審査が通りやすくなります。
中には年収500万円以上の方の・・・と書かれているものもあります。
これはほぼ100%不動産投資セミナーです。

更に、不動産投資セミナーに多いのが、参加者にはギフト券○万円プレゼント、などというものです。
そこまでコストをかけてセミナー集客する会社の立場を考えれば、セミナー内容もどの様なものか想像できるでしょう。

もちろんここでも、不動産投資や不動産会社が悪いと言っているのではありません。
むしろ、不動産を保有することで、安定した収入を確保できるのであれば、将来も安心です。
長期的な計画を立て、よく研究した上で、複数の物件を保有する方法で投資するのであれば是非お勧めです。

しかし、将来小遣い程度の不労所得を確保したいからと、ワンルームマンションでも1~2部屋保有しよう、という感覚ならば、始めるべきではありません。

この様に、敷居のやたら低いセミナーで大勢を集客し、リスクの話もそこそこに、多くの「にわか不動産投資家」を生み出すようなスタイルには疑問を感じます。

投資用不動産業者に限りませんが、やたら参加特典の多いセミナー、そして自分が詳しくない商材に関するのセミナーは、特に気を付ける必要がありそうです。

 

それよりもマズい、本当に怪しいのは・・?

これまでにお話ししたものは、決して怪しいわけではありません。
宣伝方法、案内の方法に問題があるかも知れません。
しかし、しかるべき監督官庁に認可された会社・商品であれば、問題はないでしょう。
もう少しよく検討すれば、もっと良い方法があったのに、と思う程度です。

一方で、金融機関やしかるべき会社ではなく、個人から勧められるものは要注意です。
例えば、上場予定の株が購入できるとか、利回りの極端に良い運用商品があるとか。
○○さんだから特別に教えてあげる、などと言い寄られてきたら、要注意です。

以前お笑いタレントが巨額の投資トラブルに巻き込まれたニュースを耳にした方も多いでしょう。
個人的に勧められるもの、かつそれが日本に登録された金融機関の金融商品でない場合は、ほぼアウトです。
痛い目に合いたくなければ、こうした投資話に乗ってはいけません。

数年来会ってない友達から連絡が来て、久しぶりだから会おうというのも要注意ですね。
この場合はマルチ商法の勧誘や、最近話題の宗教の勧誘である場合も考えられます。
とは言っても、純粋に連絡をくれた友達もいるかもしれません。
もし会うならば、1対1ではなく大勢で会うなど、注意しておくと良いかもしれません。

 

錯綜する情報の中では慎重な判断を

このように、特に将来不安な時代、またネットやSNSで様々な情報が大量に流されている時代。
情報提供側は、少しでも目を引こうと工夫を凝らしています。
また金融機関も、多くの方が不安に感じている時代、様々な方法でアプローチをかけてきます。
その様な中で正しい判断をしていくのは、とても難しいことですね。

FPである私も、聞いたことのない新しい情報や商品も、多く存在すると思います。
しかし、先に挙げた視点で見ると、これは避けた方が良いな、というものも見えてくるものです。

今回は最近よく聞く代表事例を挙げたにすぎませんが、少なくともこの様な事例に遭遇した時は、慎重に判断していくことをお勧めします。

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