今週気になった日経新聞記事より(2020.12.6)

住宅減税、小規模物件も 40平方メートル以上対象に(12月5日)

政府与党が2021年度税制改正で検討する住宅ローン減税の見直しの全容が判明した。
13年間の控除が受けられる特例は22年末まで延長、対象物件の面積も床面積40平方メートル以上に緩和され、50㎡未満は1千万円の所得制限を設ける。

住宅ローン控除は、年末のローン残高の1%が、一般住宅の場合40万円を上限にそのまま税額控除されるので、非常に大きな控除になります。現在は、昨年消費税10%になったのを機に、それまで10年間だった控除期間が13年に延長する措置が取られていますが、この措置も2年間延長されるという事で、優遇措置が延長されるのは良いことだと思います。

ただ、こうした住宅ローン控除が拡大されると、この点ばかりに注目が行き、なるべくローンの借り入れを増やしたり、また繰り上げ返済を遅らせたりする方が良いと考える方が多くなるようです。もちろん、なるべく支払う税金を減らしたいというのは誰もが考えることですが、このあたりの計画はしっかり検討する必要があります。

例えば4000万円を0.8%の金利で35年間ローンを組んだ方が、5年後に100万円繰り上げ返済をした場合、毎月の支払いを変えず、返済期間を短縮した場合、ローン総支払額は約25万円減額されます。
この繰上げ返済を住宅ローン控除が終了する13年後に行った場合、ローン総支払額は約17万円の減額にとどまり、約8万円総支払額が多くなります。

一方で、100万円残債が減ることによる住宅ローン控除額は、年間1万円の減額、5年後の繰上げ返済ですから残り8年で、こちらも約8万円(実際は利息があるのでもう少し多いですが)減る程度です。
8年間繰上げ返済を遅らせることで、住宅ローン控除を多く受けられますが、ローンの総支払額は同じだけ増えてしまうということになります。

もちろん、借入額や金利によって条件は異なるので一概には言えませんが、こうした施策が実施されると、不動産業者も金融機関も、なるべく多くの融資をした方が良いという話を展開しやすくなります。
私たち利用者側は、ローン控除が拡大しているうちに住宅購入をしようとか、残債をなるべく多く残して控除を多く受けようと安易に考えず、しっかりしたライフプランを立てて、ローンシミュレーションをして、自分にもっとも最適な方法を検討することが大切だと思います。

 

教育資金援助の贈与 税優遇2年延長へ(12月2日)

政府与党は2021年の税制改正で、子や孫への教育や結婚の資金援助を対象にした贈与税を非課税にする優遇処置を2年延長する方向で調整に入った。

こちらもまた税制改正のニュースからです。新型コロナの影響で一時的に経済が停滞した影響もあり、税制優遇措置が延長というケースが多いですね。

教育資金贈与は、30歳未満の人が祖父母や親から教育資金の援助を受ける際、1500万円まで贈与税が非課税になるという施策です。1500万円を一度に非課税で贈与できるので、相続対策などによく活用されています。親というよりは、特に高齢で資産を持つ祖父母が孫に贈与するケースで活用されているようです。また同様に、結婚・子育て資金に関しても、20歳~50歳の人を対象に1000万円まで非課税という制度があります。資産を保有する高齢者層から若い世代に資産の移動を促すのは大切なので、考え方としては必要な施策でしょう。

しかしこの制度、信託銀行等に特定の口座を作り、引き出す際も領収書等の書類を提出する必要があるなど、かなり煩わしい制度です。また、30歳の時(結婚子育て資金は50歳の時)に口座に残高が残った場合は、その時点で贈与税が課税されます。使い切らないことには意味がなかったということにもなりかねません。

この制度を利用しなくても、もし教育資金を贈与したいなら、子や孫の学費を直接学校に振り込んでしまえば、元より贈与税などかかりません。親が子の学費を支払うのは当然ですが、祖父母にも孫の扶養義務はあるので、学費を支払っても贈与税が課税されることはありません。あとは都度必要に応じて年間110万円の非課税枠内で贈与契約書を交わして贈与をすれば、わざわざ信託銀行等に口座を作らなくても、非課税で贈与することは可能です。

この制度のメリットは一度に1500万円を贈与できる点と、子供が無駄遣いしない点です。相続税対策として簡単にできるので利用価値が高いと思われがちですが、資金の使途を限定してしまう上、手続きも煩雑になり、手数料も発生してしまいます。
高齢者から若い世代へ資産を移転することは大切ですが、もう少しわかりやすい、手間のかからない制度を検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか?

 

高齢らに限定 実効性に疑問の声 GoTo東京発着 自粛要請へ(12月3日)

政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」をめぐり、東京都は2日、都幹部らによる会議で、東京発着の旅行について高齢者らに利用自粛を呼びかける方針を確認した。

GoToトラベルについては賛否両論出ていますが、非常に判断の難しいところですね。
昨今の感染拡大も、必ずしもGoToの施策が影響したわけではない様です。
大阪や札幌の様に知事が主導になって一時中止をすればわかりやすいのですが、東京がそれをやってしまうと影響の大きさは桁違いになるので、今回の様なスッキリしないメッセージとなったのでしょう。

それにしても以前から違和感があるのは、「自粛要請」という言葉です。東京都としては自粛要請という言葉を使っていないようですが、そもそも自粛は「自分から進んで行動を慎むこと」だから、要請や呼びかけという時点で自粛ではありません。ただし、法的に制限できない中で、最も意味合いをよく表した言葉が「自粛」なので、仕方ないのかもしれません。

まあ細かい言葉の問題はさておき、今回の対策は実効性に疑問とありますが、それは当然、そもそも経済を止めようとしていないのだから、実効性があるはずありません。実効性を求めるなら、再度緊急事態宣言でも出さないと無理でしょう。今回の都の方針は、現在は高齢者の重症化が拡大してきたので、それを防ぐのが先決というメッセージに過ぎません。また、一気に全面停止とするよりは、段階を踏んで制限するというのも効果的な方法でしょう。感染がさらに広がれば、全面停止になりますよというメッセージにもなります。

私は年末に東北への旅行を計画していましたが、キャンセル料が発生する直前に取消しをしました。私は東京都民ではありませんが、政府の専門家会議のメッセージで、不要不急の移動は控えるようメッセージが出たのが大きなきっかけで、その様な状況で行っても楽しめないと考えたからでした。

GoToトラベルは、施策としては成功を収めていましたが、今は状況が変わりました。制限区域が広がるのも時間の問題の様な気がします。関連業界の方の苦労はあると思いますが、個人的には年内は全面的に一時中断して、また感染が落ち着いたころに再度スタートする方が、強いメッセージになり、一定の効果も表れるのではないかと思います。

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