東証システムダウンから考えるデジタル時代の備え
昨日は東京証券取引所のシステムが終日停止という事態になり驚きました。
東証はニューヨークやロンドンと並び世界の3大取引所と言われています。
1日で3兆円もの取引が行われるという事で、影響は大きなものになりました。
原因はシステムの不具合という事で、先日ニュージーランドで発生したようなサイバー攻撃でなかったのは良かったですが、それでもバックアップ機器も正常稼働しなかったという原因はお粗末です。
新政権が発足し、デジタル庁が設置されるなど、今後デジタル技術を利用したインフラ整備が急速に進みます。
今後新しいシステムを整備していくことも大切ですが、既存システムの不備を減らし、盤石なものにするという点もあわせてしっかり進めてもらいたいものです。
一方で、私たちの財産の多くが、こうしたシステムで管理されているという点を忘れてはいけません。
今回の様なシステム停止が起きると、自分の財産ですら自由に取引できないという事態に陥ります。
今回も月初めであり、取引を予定していた人は想定外の出来事に動揺したことと思います。
確かに、普段当たり前のようにしていた取引が急にできなくなるのだから、困りますよね。
それが自分の財産に関わることですからなおさらです。
しかし、このような事態は完全にゼロにはできません。
今回の事態を教訓に、今一度、デジタル時代の財産管理の上で潜むリスクとその対策を考えておきたいと思います。
ネットバンクやネット証券の対策
預貯金や株・投資信託などはネット専用銀行や証券口座で管理する事も増えてきました。
そのような口座では、システム停止で預金や証券類が失われる事まではなくとも、一時的に取引できなくなるという事態は十分に考えられます。
今回のような取引所自体のシステムダウンはまれですが、各銀行や証券会社のシステムがダウンする可能性は、東証のシステムダウンより高いでしょう。また、停電やインターネット環境の不具合でも取引できなくなるリスクもありますね。
銀行はできれば口座を複数持ち、ネットバンクだけでなく、窓口で預金引き出しができる銀行口座も持っていることが必要です。そのような口座では災害で停電が続いた場合なども、緊急に預金を引き出す対応をしています。
証券会社では緊急に資金を引き出すというケースは少ないかもしれませんが、急いで取引したいときに口座が利用できなくては困ります。せめてコールセンターなどの緊急時の連絡先などを控えておくことをおすすめします。
また、自分が利用する通信会社の不具合もリスクとなります。WEBにアクセスできる手段をスマホだけに頼らず、PCなども含め2つ以上確保しておくことも必要でしょう。
クレジットカード・キャッシュレス決済の対策
こちらもシステムダウンの他、会計時の停電や通信障害の影響が大きいです。
またクレジットカードはセキュリティが強化され、ICチップが埋め込まれているものが増えていますが、この読み取り不具合も多く、利用できないというケースも増えてきています。
昨今の不正利用問題でカード会社・キャッシュレス決済業者のキュリティ体制は今後更に強化されていきます。
その過程で、所有者自身でも複雑なパスワードを忘れたり、ICチップの不良などで認証をパスできず、利用したいときにできないというケースも増えてくるでしょう。
こちらも、利用しているサービスの緊急連絡先を控えておくことはもちろん、複数のカードを利用する、常にある程度の現金を持ち合わせておくといった準備が必要です。
各種ポイントの対策
金融機関に限らず、大きな店舗では独自にポイントシステムを導入している所もあります。またクレジットカードの利用もポイントが積算され、中には数万円分も利用できるポイントを所持している方もいらっしゃると思います。
このようなポイントも停電・通信異常で使えなくなるリスクがあるので見過ごすわけにはいきません。
ポイントの中には有効期限が設定されているものもあります。
あまり高額なポイントを貯めこまない、有効期限前に余裕をもって使うといった利用法を心がけると良いと思います。
資産管理も「分散管理」を
このように、普段当たり前のように利用しているサービスも、ひとたび利用停止に陥ると日常生活に大きな混乱が生じます。
資産運用も分散投資が大切ですが、資産管理においても、1つの手段に頼るのではなく、いくつかのサービスに分散して管理する「分散管理」の考え方が大切です。
時代に逆行するかもしれませんが、手元に常に一定の現金を保有しておくことも、備えとして有効です。
また、これは日常生活上の全てにおいて言えることですが、停電や通信不良への準備をしておくことも大切になります。
東証のような不具合が絶対に起きてはならないシステムでも、今回のようなことが起きます。
東証レベルのシステム停止は私たちに防ぎようがありません。
しかし、今後デジタルに囲まれる中で生活していくことが避けられない中で、自分の責任においてできる範囲で、様々な不具合に対応できる体制を作っておくことは、今後大切になってくると思います。