マイナス金利解除で思い出す、住宅ローンの失敗談
先日、日本銀行がマイナス金利政策の解除を発表しました。
これまでマイナス0.1%だった政策金利が、0~0.1%となります。
マイナス金利が導入されたのは2016年2月なので、実に8年ぶりの金利復活。
また、利上げという意味では、2007年2月以来、実に17年ぶりということになります。
日銀の掲げる「安定した2%の物価上昇」が見込めたことで、大規模な金融緩和政策が終了します。
というわけで、これからは、久しぶりに「金利のある」世の中になると言われています。
自分のマンション購入時の失敗談
金利の上昇と聞いて思い出すのは、自分が住宅ローンを組んだ時です。
マイナス金利ではなかったですが、2000年からのゼロ金利が続いていた後、2006年から2007年にかけて、金利が0.5%まで上昇する時期がありました。
私はちょうどその頃に今のマンションを購入し、住宅ローンを組むところでした。
その様な時期で、その後金利は上がるとの予測が私の頭を支配していたため、30年長期固定、当時3%前後の金利でローンを組みました。
これで将来に渡り毎月のローンの支払額も変更することなく安心と思っていました。
しかし、その後の金利は上昇するどころか、2008年には0.1%に逆戻り。
更に2016年にはマイナス金利に突入。
結局10年くらい経過した後、金利0.8%の10年固定金利に借り換えたという経験があります。
その借り換えで、毎月の支払いを2万円前後下げることができました。
当時は今と違い、固定金利で借りる方が多かったように思います。
しかも、まだFPの知識などあまりなかったので、金利が上昇するから長期固定だ!という単純な発想でした。
今でしたら、変動金利で借りた場合の金利を確認し、毎月の支払額や支払総額の差を確認するなど、もう少し慎重な検討をしたかもしれません。
変動金利の住宅ローンは、金利上昇にどう備えるか
変動金利で借りている場合、金利上昇にどう備えるいま住宅ローンを変動金利で借りている人、またはこれから住宅購入を検討する人は、今回のマイナス金利解除は、気が気ではないニュースでしょう。
現在の住宅ローン変動金利は、一般的な優遇金利を適用すると、0.4~0.5%程度となり、非常に低い水準です。
一方の長期固定金利は昨年より上昇しており、1%を超えるものがほとんどです。
昨今の住宅価格の高騰もあり、最近住宅ローンを組む人の8割は、負担の少ない変動金利を利用していると言われています。
この変動金利の住宅ローン、すぐ急激に上昇という事はなさそうです。
今回マイナス金利解除と言っても、政策金利自体の変動幅は0.1%程度とわずかです。
また、住宅ローンは銀行間の競争も激しく、金利の引き下げ競争が依然続いています。
更に、金利が上昇する事で、住宅を購入する人が減少する方が、経済に与える影響が深刻です。
こうした事情から、住宅ローン金利に関しては、もうしばらく低金利の状態が続くのではないかと言われています。
しかし、長期的に見れば金利は上昇していく可能性が高いです。
住宅ローンを変動金利で借りる場合、金利上昇した時のシミュレーションをしておくことをお勧めします。
たとえば、5000万円を変動金利0.5%・35年ローンで組んでいる方の、月の支払額は129,792円です。
仮に5年後に金利が1%に上昇した場合、月の支払額は139,531円と約1万円上がります。
その5年後に金利が1.5%に上昇した場合、月の支払額は148,071円と、更に9000円ほど上昇します。
なお、住宅ローン金利は毎年上昇する事はなく、5年おきに見直されることが多いです。
また変動幅も、125%以内に抑えられる激変緩和措置が取られていることも多いです。
このように、金利上昇時の返済額の変化、また金利が変動するタイミングや変動幅を確認しておくことで、ある程度家計の負担の見通しを立てることができると思います。
※ローン返済額は金融広報中央委員会「知るぽると」のサイト「暮らしのチェック」で大体の金額を確認することができます。なお、実際の返済額は金融機関のご案内をご参照ください。
普通預金・定期預金の金利上昇も
住宅ローンにほかに、多くの方が身近に感じるのは、銀行の預金金利でしょう。
多くのメガバンクが今回の政策変更で、普通預金金利を、従来の0.001%から0.02%と、20倍も引き上げました。
しかし、100万円預けていた場合、利息は年間10円が200円(税引後は8円が159円)というレベル。
20倍と言うと大きな変化と感じますが、まだまだ金利の恩恵を実感するレベルではありません。
また、定期預金についても、今後金利上昇が見込まれます。
しかし、以前より上昇したとは言え、現在の定期預金の金利は、ネット銀行でも0.3~0.4%程度。
100万円の利息は、金利0.4%の場合4000円(税引き後3187円)と、まだ低い水準です。
定期預金は、数年以内に使用する可能性のある資金の置き場として利用するには良いでしょう。
しかし、この程度の金利では、日銀の目安とする2%の物価上昇を前提とする世界では、物価上昇に追いつきません。
金利のある世の中になったとは言え、普通預金・定期預金の利息はまだまだ低い水準です。
やはり、将来への準備資金は、物価上昇のペースを超える資産運用をすることが必須になると思います。
マイナス金利政策終了を気にせず、長期的な変化への準備を
「金利のある世界」になったと言っても、変更後も0~0.1%と、超低金利であることには変わりません。
今回の政策変更も、マイナスがプラスになったというのは大きな変化ですが、金利の変動幅は0.1%に過ぎません。
しかも、この低金利政策はまだ継続すると発表されています。
基本的に、金融緩和政策が当面続くことには変わりません。
今後長期的に金利が上昇していく可能性は高いとしても、諸外国の様に、数年以内に2%、3%と上がっていくことは現実的ではありません。
もしそのような方針になれば、経済活動を冷え込ませることになっていまいます。
マイナス金利解除は大きなニュースですが、金利の上昇幅はわずかです。
私たちはこうしたニュースに過剰反応する必要はないでしょう。
今後金利が上がるからと、住宅購入を急いだり、慌てて固定金利に変更する必要もないでしょう。
普通預金から金利の上がった定期預金等に預け替えても良いですが、その効果もわずかです。
それよりも、長期的な緩やかな金利上昇に備えて、金利上昇した際のシミュレーションをしておくなどの準備を進めておくことが大切だと思います。