いよいよ新紙幣が流通開始しました
(国立印刷局「新しい日本銀行券特設サイト」より)
今日から新紙幣が流通することになりました。
発表されたのが2019年と結構前だったので、忘れてたという方も多いかも知れません。
しかしさすがに今日はテレビや新聞もこの話題が中心になっていましたね。
今朝のニュースでは、新1万円紙幣の肖像となる渋沢栄一の出身地深谷では、
午前0時にカウントダウンも行われたという事です。
特に1万円紙幣に関しては福沢諭吉が2回続いていたので、40年ぶりの肖像の変更。
その様な意味では新鮮さを感じます。
新紙幣発行の目的は「偽造防止」
今回の新紙幣、5年前の発表の際も不意を衝かれた感じがしました。
「なぜこのキャッシュレス時代に新紙幣?」
確かに、ここ数年で紙幣を使う機会は大幅に減っています。
特に、1万円札を使うような高額な買い物は、クレジットカードや振込がメインですね。
しかし、紙幣は偽造防止の意味もあり、一定の時期毎に刷新されています。
前回は2004年・その前は1984年ということで、ちょうど20年間隔だそうです。
いくらキャッシュレスが進んでも、さすがにまだ紙幣を無くすことはできません。
ある一定期間が経過したら新紙幣を準備するのは必要なことでしょう。
特に今回は最新の偽造防止技術が使われており、
・インキが盛り上がっている深凹版印刷
・肖像が見る角度により変わる3次元印刷
・傾けると両端にピンクの光沢が見えるパールインキ
などなど、かなり精巧な作りになっている様です。
この技術は「絶対に偽造できないレベル」だそうで、そのあたり見てみるのが楽しみです。
意外にも紙幣はまだ多く流通している
これだけキャッシュレスの時代ですが、実は紙幣は意外にも多く流通しています。
日経新聞によると、前回新紙幣が発行された2004年頃は、1万円札が市中に約65兆円流通していました。
これに対し、現在は約112兆円も流通しているとのことです。
私もこれを聞いて驚きました。
経済が成長し物価が高騰したということもありません。
直近20年間の経済成長はGDPの増加率7%程度です。
これと比較しても、流通する紙幣の増加量が非常に多いと感じます。
これは、高齢者を中心に、いわゆる「タンス預金」が増えているのが一因と言われています。
銀行に預けても利子もつかないし、投資を始めるのもコワい、という高齢者を中心とした方々が、
手元に現金を保有するのが安心、という事で、その額が大幅に増えたということでしょう。
確かに、終活も兼ねて手元の株などを売却したという声も多く聞きます。
そもそも、高齢者自体の人数も増えているわけですから、その金額も大きくなるのでしょう。
タンス預金はお勧めできません
なお、新紙幣発行は、そうしたタンス預金の1割を市中に流通させる効果があるとも言われています。
今回もその様な効果を狙っての新札発行とも言われています。
確かに、旧紙幣のままタンス預金を続けるのは抵抗がありますね。
新札が出回ってから旧紙幣を何百万円・何千万円という単位で両替するのも不自然です。
その様な意味で、タンス預金の炙り出し効果は見込めるかもしれません。
手元に現金を持つ安心感や、財務当局に財産を把握されないという点で、タンス預金をされる方が多いでしょう。
しかし、そもそもタンス預金はあまりお勧めできません。
災害が起きて現金が燃えたり流失してしまったりすれば元には戻りません。
また、財産を把握されないという点においても、預金を引き出して自宅に置いても、財務当局は過去の取引からある程度の資産を把握できます。
更に相続税調査などではタンス預金も徹底的に調べられます。
そして、これだけ物価上昇が続く世の中、物価が上昇してもタンス預金の金額は変わりません。
年間2%の物価上昇が10年間続いた場合、100万円の商品は約122万円になります。
一方、タンス預金の100万円は100万円のままです。
気づかないうちに手元の現金は「購買力の低下」を起こしていくことになるわけです。
このような点でも、タンス預金はできるだけ避けた方が良いと思います。
1万円紙幣の肖像渋沢栄一とは
新紙幣発行で更に興味深いのが、新1万円紙幣の肖像となった渋沢栄一です。
渋沢栄一は「近代日本経済の父」とも言われ、明治初期に日本の発展に大きく貢献をした人物です。
現在も日本の産業の基幹を担う数百社の創設にかかわったとされています。
まさに長期間低迷していた日本経済ですが、最近になって浮上の兆しを見せてきています。
「貯蓄から投資へ」と言われるこの時期に、新紙幣が渋沢栄一になることには大きな意味を感じます。
また、渋沢栄一の行動は、自己の利益の追求ではなく、社会全体の発展を目指しています。
これは「道徳経済合一説」と言われ、経済活動と倫理的な行動は一体であり、経済的な成功と道徳的な価値観は両立するべきだという信念が基盤にあります。
最近になってSDG‘S(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)など、企業の社会貢献への取り組みを重要視する考え方が広まっています。
渋沢栄一は百年以上前からこうした考え方の原点を実践していたと言えるでしょう。
資本主義が発展し、環境問題や人口減など様々な問題を抱えるようになった時代。
その様な時期こそ、渋沢栄一のように社会全体を見渡す姿勢が、大切になると思います。
これからの新紙幣との付き合い方
確かに、キャッシュレスの進んだ時代、紙幣に触れる機会は減っています。
私たちが「お金」として認識するものが、以前は紙幣や硬貨だったものが、今はスマホやパソコンに表示される数値です。
物価高騰の問題などは別にしても、何となく1万円の重みやありがたみが薄れているような気もします。
今回の新紙幣発行は、お金の価値について、もう一度見つめ直す良い機会にしたいと思います。
なお、私個人的には渋沢栄一の思い入れが強かったですが、五千円紙幣・千円紙幣も刷新されます。
五千円紙幣の肖像である津田梅子は、女性教育の推進者として日本初の女学校・津田塾大学を創設しました。
これは最近のジェンダー平等の推進というテーマに通じています。
また、千円札の肖像である北里柴三郎は、破傷風菌を発見するなど、細菌学のパイオニアと言われています。
新型コロナで医療現場が注目された時代を経て、新紙幣に登場した点に因果を感じます。
こうした肖像となる人物の歴史的功績を再確認して、今の世の中との関りを考えてみるのも良いですね。
まだ手にするには数日かかりそうですが、入手したらその様な点にも思いを巡らせたいと思います。