最近は少ない人もいますが・・・住宅購入の自己資金は多いほどお得で安心
新型コロナの影響でテレワークが進み、都心への通勤機会も減ったり、より広くて快適な環境を確保したりするため、住宅購入を検討する方も増えているようです。
それに伴い、住宅の販売価格も上昇しています。不動産経済研究所の統計によると、2021年の首都圏1都3県の新築マンションの平均価格は6260万円で、昨年より約3%上昇、1990年の最高値を更新したとのことでした。これに伴い中古マンションや戸建てなども、全体的に価格上昇の傾向が続いているようです。
先日のご相談者も、マンション購入を検討したいが、あまりにも価格上昇が続くので、2~3年様子を見ることにしたとお話していました。しかし、不動産価格は下がる気配もなく、建材費や人件費の高騰は続いているので、この傾向はもうしばらく続きそうです。
一方で、住宅ローンを組むには、ローン金利が過去最低水準であり、住宅購入を後押ししている面もあります。
特に最近は金利の上昇が見込まれていることから、早めの購入を勧められるケースも多いようです。
そうした中、最近気になるのは、自己資金を十分用意せずに住宅購入に踏み切る方が多い点です。
いくら低金利でも、自己資金はできるだけ多く準備して購入することをお勧めしています。
ではそもそも、自己資金を多く入れて住宅購入をすると、どのようなメリットがあるのでしょうか?整理してみたいと思います。
金利負担が減り、毎月の負担額や総支払額が減る
自己資金を多く入れることで、借入金額が減り、その分金利の負担がが少なく済む点は、すぐイメージがわくかもしれません。
では、実際どの程度の違いが出るのでしょう?
例えば、35年ローン・長期固定金利1.2%の場合、
3000万円借入:
毎月支払額約8.75万円・総支払額約3672.5万円・利息約672.5万円
となります。
ここに、仮に自己資金200万円を準備して、借入額を2800万円とすると、
2800万円借入:
毎月支払額約8.17万円・総支払額約3427.7万円・利息約627.7万円
となり、毎月の支払い額が6千円ほど減る上に、支払利息の総額も約45万円安く済むことになります。
自己資金を200万円増やすことで、45万円の利息が節約できるとしたら、なるべく多くの自己資金を準備するとメリットが大きくなることがご理解いただけると思います。
ローン金利自体も下がる!?
自己資金を多く入れることで、金利が下がるとはどういう事でしょうか?
金融機関では、ローン借入の際に審査を行いますが、この時に、年収や職業・勤続年数などのほか、借り入れ条件なども審査項目となっています。この時に、購入価格のうち用意できる自己資金の割合で、ローンの金利も変わってくることがあります。
例えば、とある大手金融機関の、今年2月の35年長期固定(フラット35)の貸出金利は、以下のようになっています。
物件価格の7割以上借入の場合1.2%
物件価格の9割以上借入の場合1.3%
全額借入のフルローンの場合1.61%
このように、借入割合が多くなるにつれて金利も高くなるように設定されています。
この場合、総支払額3000万円の物件を購入する場合、自己資金無しの場合は、
3000万円借入(1.61%・35年):
→毎月支払額約9.35万円・総支払額約3992.3万円・利息約992.3万円
となりますが、借入額を7割(自己資金を3割・900万円)とすると、
2100万円借入(1.2%・35年)・自己資金900万円:
→毎月支払額約6.13万円・総支払額約2570.8万円+900万円=3470.8万円・利息約470.8万円
となり、利息は約520万円も変わることになるのです。
このように、できるだけ自己資金の割合を高めることで、借入金利も低くなるので、より利息の負担を減らすことができます。
万一家を手放すときに、ローンの支払いが残ってしまう・・
ここまで、自己資金を準備することで総支払額が大きく減る効果を見ていただきました。
しかし、自己資金を準備した方が良い最大の理由は、この点かと思います。
最近は、新型コロナの影響で収入が大幅に減ったり、退職を余儀なくされたりするケースも多いです。
この様なケースで、ローンを支払い続けることができず、やむを得ず家を手放すことになるケースも考えられます。
例えば、先ほどの3000万円の家をフルローン35年・金利1.61%で購入した方が、10年後に家を手放す場合、その時点のローンの残債は約2307万円になります。仮にこの時に家が2000万円でしか売れなければ、家を手放したにもかかわらず、残り300万円余りを支払わなければいけません。
最近は不動産の価格も上昇しているので、場所によっては購入した時よりも高く売れたなどというケースもあります。しかし、既に価格の高騰が進んだ今では、よほどの一等地でない限り、将来の売却価格は下がると考えておいた方が良いでしょう。
このように、自己資金を多く準備しておくことで、いざ家を売却しなければならないという時に、家の売却額でローンの残債を返済しきれないというケースを避けることができるわけです。
ローンの計画は慎重に
このように、住宅ローンを組む場合は、自己資金を多く準備することで総支払額を抑えたり、いざという時にローンの支払いだけ残るといった事態を避けたりすることができます。
しかし最近では、物件価格も高騰し、低金利も続いていることから、十分な自己資金を準備せず購入に踏み切る方が多いような気がします。不動産業者や金融機関も、自己資金の少ないローンのプランを提案するケースも見受けられます。しかし、住宅ローンの組み方一つで、後々大きな後悔をするケースもあります。
住み替えを考えるときに、綺麗なパンフレットを見たり、モデルハウスを内覧したりするとテンションも上がってしまい、つい無理なローン計画も何とかなると思いがちですね・・
もちろん、住宅購入は夢のひとつでもあり、それを実現することも大切だと思いますし、必ずしも自己資金が無ければ購入できないというものでもありません。しかし、無理な計画を実行して生活が立ち行かなくなっては意味がありません。
自己資金の準備によって、今後のローン返済にゆとりが生まれます。
どの程度準備したら良いかは、一般的には支払総額の2~3割などと言われていますが、家庭の状況や商業、希望する物件により変わるので、一概に何割なら大丈夫ということはありません。また、金利や借入期間以外でも、住宅ローン控除、団体信用生命保険の内容など、ローン検討の際に検討する事項は様々です。
そのような点も踏まえて、提案されたプランだけでなく、FPなど業者以外の専門家の意見を聞きながら、慎重に計画されることをお勧めします。
※この記事のローン返済額の計算は一例です。計算方法によって金額に誤差が生じる場合があります。