株式相場が乱高下!長期的な資産運用ではどう対応する?
昨年の3月、新型コロナの影響で歴史的な下落に見舞われた株式相場も、その後上昇してきて、最近は日経平均は30年ぶり、米国ダウ平均は過去最高の水準まで推移してきました。
しかしここ数日では、この上昇を続けてきた相場にも調整が入り、特に26日には日経平均が1200円以上も下落するなど、日々大きく変動しています。
昨年あたりから、株価の大きな変動や、在宅勤務が広まったのをきっかけに、株式や投資信託で資産運用をスタートした方も多いと思います。また、ここ数年間で広まったIDECOやNISAを活用している方も多いでしょう。
日々相場とにらみ合いして売買しているトレーダーの方ならともかく、私たちは年中株価ボードを見ているわけにもいかないし、見る必要もありません。しかし、こう毎日のように株価の変動について報道されると、気になってしまうのも確かです。
その様な中で今回は、長期的な資産運用を考えている方が、相場変動の激しい中、どの様に対応したらよいかを考えていきたいと思います。
これまで株式が買われる環境になっていた
まず、これまでの株価上昇がなぜ起きていたのかを知っておく必要があると思います。
新型コロナウイルスの影響で、日本を含め各国の政府は、助成金や支援金など、大規模な財政出動を行ってきました。
私たちが昨年受け取った定額給付金もそのひとつですね。
まずはこうした資金が株式購入の財源になっているという見方があります。
また日本株で言えば、日銀もETF(上場投資信託)を購入する方法で、株式を大量に購入し続けています。
これだけの財政出動の財源は国債の発行・つまり国の借金で賄われています。
すると、金利が上昇してしまうと借金の返済額も膨らんでしまいますので、当面は低金利の政策が継続することが見込まれます。
そのため、当面の低金利が見込まれる債権よりも、株式に資金が向いやすいという流れができていると考えられます。
このほかにも株価上昇の要因はありますが、新型コロナによる大規模な財政出動により、通常の時期より株式が買われやすい状況であったことは間違いないでしょう。
不安な世の中で起こりやすい過剰反応
新型コロナウイルスの影響で、先行き不透明で不安な世の中が続いています。
相場の変動も大きくなっていますが、このような時は特に、経済や社会の動きに過剰に反応する傾向が強くなるように思います。
今年に入ってからの株価の上昇の大きな要因は、ワクチン接種開始による感染収束への期待です。
このコロナの閉塞的な状況の中、ワクチン開発は大きな望みですね。
ワクチン接種でコロナの感染が収束に向かうという期待が膨らみ、株式は買われています。
このように、先行きが見えなかったところに方向性が見えるきっかけが生まれたとき、相場は大きく変動するものです。
昨年11月の米大統領選に関してもそうでした。
10月頃まではトランプかバイデンか全く予想がつきませんでしたが、バイデンの勝利宣言が出た頃に相場は大きく上昇。
先の読めない不安心理の中では売買を控えていたけれども、先の見通しが見えたところで不安心理が後退し、買いが多く入ったという事が考えられます。
そして26日の大幅な下落は長期金利の急激な上昇です。
金利上昇により株式市場の資金が移動するという警戒感からか、株式相場は下落を始めました。
これまでの上昇理由が、当面低金利で市場に資金供給が継続するという考え方だったので、その前提が崩れる金利の上昇と言う出来事は、今後投資家にとって大きな不安となる出来事でした。
そして下落ペースが高まると売りが売りを呼ぶ状態となり、更に下落ペースが加速したようです。
また、26日がたまたま今月最後の取引日だったことも一因です。2月の相場急上昇で株式の保有比率が高まった機関投資家が、株式の保有比率を調整するために売却を進めたという点もあります。
最近はSNSで、インパクトがある情報ほど物凄いスピードで情報が拡散します。
そうした影響もあり、1つのニュースをきっかけに相場は大きく変動を繰り返してきました。
現在の様に先行き不透明な状況の中では、普段よりもニュースに過剰に反応しやすいという事を知っておくと、今の動きも少しは冷静に見ることができるのではないでしょうか?
相場の転換点で変化を確認
長期的な資産形成を考えるときに、こうした短期的な相場の動きに一喜一憂して取引を行うのは得策ではありません。
特に、これだけ急ピッチで上昇してきた相場は、今回のような調整する時期が必ず訪れます。
昨年8月に金の価格が史上最高値になって、金投資が盛り上がったのを覚えているでしょうか?
金は先行き不安の時期に購入され価格が上がるものですが、現在は当時より1割以上値下がりして、ニュースにもならなくなってしましました。このように、相場のトレンドの変化も早くなっています。
では、相場の上昇が一服した今の状況で、資産を早急に売却して利益を確定する方が良いでしょうか?
これについても、長期保有を前提としているのであれば、自分が将来性を見込んで購入した会社の株式や、インデックス型の投資信託などでは、引き続き保有し続けるという方法が良いのかも知れません。
長期運用を前提に考える場合は、短期的な相場の動きに乗らない方が賢明です。
以前「投機と投資は違います」という記事にも書かせていただきましたが、今一度自分が投資した理由を思い出し、冷静な判断をしていくと良いと思います。
そして、あえて必要な事と言えば、今回の様な相場の大きな変動や転換点と思われる動きが見られたときに、自分の資産のバランスを見直して、当初見込んでいた資産配分が大きく変わっていないかを確認する事です。
もし当初の予定と大きく変わっているようでしたら、方針を見直す、資産の保留比率を調整する(リバランスと言います)などの対策を取る必要があるかと思います。
ニュースに惑わされることなく、冷静な対応を
長期的な運用をする中で、相場変動はこれから先も必ず起きます。
昨年3月の大暴落時の時は、○年ぶりの下落幅という報道を何度も聞いて、私も含め、落ち着かなかった方も多いと思います。
しかしその後株式相場は1年足らずの間に大幅な回復を見せました。
今後まだ変動する可能性はありますが、当時は不安でしたが、冷静に待つことで、相場は回復してくることがわかりました。
ここ最近のニュースでは、日経平均30000円の大台突破とか、30年ぶりの高値などと報道されてきました。
このように、ニュースはセンセーショナルに伝えるのが仕事なので仕方ありませんが、30000円は一つの通過点に過ぎませんし(実際今は29000円も割ってしまいましたが)、30年ぶり高値と言っても、当時と現在では経済情勢・社会情勢・物価なども異なり、単純比較できるものでもありません。
因みに、26日の日経平均の下落幅は過去10番目だそうですが、株価が20000円前後の場合と30000円前後の場合ではインパクトは異なります。こちらも、下落の大きさは下落幅でなく下落率で判断をするべきだと思います。
長期的運用に取り組んでいるならば、このようなニュースに翻弄されることなく、自分の方針を再確認して、落ち着いて対応していくことが大切だと思います。
※筆者の考え方を記載しています。投資や資産運用は各自の判断と責任において実行してください。