新型コロナで活躍場所の増えた「雇用保険」に注目!
雇用保険の存在は知っていても、詳しい仕組みについてはあまり気にしたことが無いという方も多いのではないでしょうか?
雇用保険の対象になる方(被保険者)は、労働時間が週20時間以上、雇用の見込みが31日以上ある労働者です。なお、個人事業者や会社役員は含まれません。
保険料は一般の業種の場合、給与または賞与の額の9/1000で、うち6/1000を雇用者側が負担しています。
なお、農林水産業や建設業は料率がもう少し高くなります。
企業に勤めている社員の方は、毎月給与天引きされているのはご存知かと思います。しかし、大雑把な計算ですが、月給50万円の人でも天引き額は1500円です。健康保険や所得税の天引きに比べたら、金額も低いので、存在としては地味なのかもしれません。
しかし、最近の新型コロナの問題では、特に飲食業やサービス業で業務が減り、社員を休業させる場合など、休業補償の原資になっています。またやむを得ず退職して再就職先を探す場合など、失業保険の給付の原資にもなります。
将来の働き方も変わっていこうとしている中、雇用保険は誰でも今後お世話になる可能性の高い制度です。
今回はそんな雇用保険の制度について一度整理をしてみたいと思います。
「雇用調整助成金」の財源になっています
新型コロナによる雇用維持の対策のため、社員を休業させた会社に、その休業分の手当てを補填する「雇用調整助成金」が支給されています。現在は特例処置で支給要件も緩和されています。
この金額が膨大で、昨年末までだけでも、2兆5千万円以上の支給が決定しています。この資金は雇用保険の雇用安定資金が充てられていましたが、それだけでは到底カバーする事が出来ず、失業給付の財源から借り入れたり、国の予算である一般会計から準備したりするなどして支払いを継続しています。
それまで雇用保険は比較的財源にゆとりのある制度でしたが、今回の新型コロナの問題で大きな支出をすることになりました。今年に入っても感染収束は見通せておらず、雇用調整助成金の制度は継続しており、まだ支出が増えていきそうな状況です。今後の財源の推移によっては、将来的に保険料の変動などの影響が出てくるかもしれません。
「失業手当」は雇用保険のおかげ
会社を退職して引き続き仕事を探す場合、失業手当(失業保険)を受け取ることができます。
失業手当は雇用保険の基本手当と言われ、原則離職前2年間の間に12か月以上の被保険者期間がある人が、失業した時に安定した生活を送れるように給付されるものです。
なお、この基本手当は、次に就職をする意思が合って、積極的に仕事を探している状態であることが必要で、ハローワークへの登録が必要です。したがって、ケガや病気で就業できない人や、仕事をする意思のない方は受け取ることが出来ません。また会社都合による退職の場合はすぐに給付されますが、自己都合退職の場合、当初3か月は給付されないので注意が必要です。転職や離職を検討の際は、自分のケースでは失業手当がどのように給付されるのか、確認をしておくことが大切です。
「育児休暇」も雇用保険の制度です
子供が生まれたときに産休や育休を取る事が多いと思います。このうち、産休は産前・産後休業を併せたもので、これらは健康保険の制度になります。一方、この産後休業の後に取得できるのが育児休業給付で、こちらは雇用保険の制度になります。
出産後8週間以降(男性は出産後すぐ)、子供が1歳になる日の前日まで取得可能です。また、保育園入園を希望するのに入れないなど、一定の条件を満たせば1歳半または2歳になる前日まで給付されます。給付額は休業開始時の賃金日額の67%、育児休業開始から6か月経過後は50%の支給となります。
最近は「イクメン」などと言われ、男性の育児休暇取得が話題になっています。原則、育児休業は1回のみの取得ですが、男性は出産直後と合わせて2回の取得が認められています。今後も、4回にわたり取得できたり、取得の申告期限が1カ月前であるのを2週間前までにするなど、男性に育児休業を取得しやすい環境整備が検討されています。
また、夫婦両方が育児休暇を分担して取得することで、父母のどちらかがが1歳2か月まで育児休暇を取得できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。
資格取得やキャリアアップに活用できる「教育訓練給付」
雇用保険には、資格の取得などキャリアアップを目指す人に、「教育訓練給付」があります。
教育訓練給付には、一般教育訓練給付と専門実践教育訓練給付があります。
一般教育訓練給付は、厚生労働大臣の指定する教育訓練制度を終了した場合に、その費用の20%・最大10万円が支給されます。キャリアアップのための資格取得などに活用できます。資格取得の通信教育で利用したことのある方もいるのではないでしょうか?
また、専門実践教育訓練給付金は、特定の業務につくことを目的に専門学校や専門大学院の講座を受講する場合の給付金です。教育訓練経費の50%相当額、年間上限は40万円、通算120万円を上限に支給されますので、大きな給付金額となります。更に、取得した資格を生かして就職した場合は、20%の追加給付もあります。
今回の様な新型コロナの問題が発生した時に、それまで好調だった会社も急に業績不振に陥り、希望退職を募集したり、他業種への出向や異動を実施したりするケースが増えています。将来のためにも、現在の仕事以外のスキルや資格を取得する必要も高まっており、こうした準備のために是非活用したい制度です。
家族が介護状態になった場合の「介護休業給付」
本人または配偶者の両親・祖父母・兄弟姉妹・子・孫などの介護のために休業を取得した際には、「介護休業給付」が支給されます。介護休業は介護者1人当たり年間93日間の取得が認められており、休業開始時の賃金日額の67%が支給されます。なお、休業期間中に賃金の80%以上が支払われている場合は支給停止となります。
またこの他に、雇用保険の制度ではありませんが、介護のために時短勤務ができる制度や、介護休業とは別に年間5日間まで取得できる介護休暇の制度もあります。
最近は介護離職をされる方も増えていますが、こうした制度を活用せずにやむを得ず離職する方も多いようです。会社の体質によるところも大きいかもしれませんが、労働者に認められた制度はできるだけ活用して、介護離職をできるだけせずに済むよう、検討していくことが大切だと思います。
60歳以降も働き続ける方には「高年齢雇用継続給付」
高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と、雇用保険の基本手当を受給した人が対象になる高年齢再就職給付金があります。60歳~65歳の間の給与が60歳時の75%以下になっているなどの条件を満たした場合に、給付金が支払われます。
給与の低下率が61%以下の場合、支給率は対象付きの賃金の15%、61~75%の場合は低下率によって15%~0%となります。
高齢者雇用安定法の施行により、企業には2025年より65歳までの雇用継続の義務化が実施されるため、この制度は今後縮小が検討されています。
雇用保険は働く私たちのセイフティネット
このように、雇用保険には失業時に受け取れる基本手当以外にも、様々な給付があります。
制度については聞いたことがあるけれども、雇用保険の制度だと知らなかったものもあるではないでしょうか?
新型コロナの影響で、それまで業績の好調だった会社が一気に希望退職を募集したり、やむを得ず求職したり退職をしたりする人も多く発生しました。
新型コロナをきっかけに、変化の激しい時代に突入しました。1つの会社に定年まで留まるというケースは、今後更に減っていくでしょう。様々な事情で仕事を継続できなくなったときに、私たちを守るセイフティネットになる「雇用保険」。その制度について、ある程度仕組みを知っておくと、今後役に立つことも多くなるのではないかと思います。