いつか必ず考えることになる「実家」の問題
ミドル世代で地方や郊外の実家から都心近郊に出てきた方の中には、親からの相続や、親が施設へ入所するのをきっかけに、実家の処分をどうするか悩む方が増えています。
2024年には団塊世代の親が75歳を迎えると言われており、これから数年間で、この問題はさらに増えてくるでしょう。
実家に高齢の親が住んでいるという場合は、いつか必ず直面する問題です。
実家をどうするかは早い段階でご家族の間で話し合っておきたいテーマの一つです。
ここではよく起こりうる実家の問題について、考えておくポイントをお話したいと思います。
そもそも将来住むのかどうか
実家の将来についてまず考えるのは、当たり前のことですが、その場所に将来住むのかどうかです。
ご家族状況を考えながら、将来住む可能性があるのであれば、家を保全するという考え方が必要になります。
築年数にもよりますが、リフォームをするなど、長く住み続けられる家にしないといけません。
家は保有するだけで固定資産税や水道光熱費等の負担がかかります。
空き家になると数カ月で室内の空気はカビ臭くなり、庭の草木は伸び放題という状態になります。
将来住むことを検討しているのであれば、それなりに保全するための費用も発生します。
定期的に訪問するなど、管理をし続ける必要があることを考えておく必要があるでしょう。
相続後すぐ住まない家を管理し続けるのは大変
ミドル世代より少し上、60代の方に多いですが、地方の実家の両親が亡くなり、近くに身寄りもなく、空き家として残った実家に定期的に帰って掃除など手入れをしているという方もいらっしゃいます。
昔は兄弟も多く、地元に残る兄弟に実家の管理を頼ることも出来ましたが、最近は兄弟も減り、自分しか実家の管理ができないという状況の方も多いようです。しかしこれは、体力的にも、時間的にも経済的にもかなり負担を強いられることになります。
最近は60代を過ぎても仕事をしている方が多く、将来実家に住むと思っていても、なかなか戻れない様です。
一方、売却すると言っても、地方の物件は売却に苦労するケースも多いです。
地方に残された実家は、想定以上に大きな負担になるという事を、考えておく必要があります。
登記簿謄本の確認を
将来住む場合はもちろん、売却する予定があればなおさら、その家の登記簿について確認しておく必要があります。
登記簿謄本を確認すると、土地・建物の所有者がわかります。
これが親御さんであればよいのですが、既に亡くなられた方の登記のままであれば、相続人の間でその家の権利がどなたにあるのか確定をしないと、家を売却するなどの手続きが出来ません。
不動産登記は義務ではない上に、費用も掛かる事から、相続の際に登記をしない方も多いです。
そうすると実質は法定相続人の間で共有されていることになります。
その様な不動産を売買したり、相続が発生したりすると、登記されている人全員に確認を取る必要が出るなど、非常に手続きも面倒になり時間も要します。
まずは登記事項が実際の所有者になっているか確認して、もし所有者と登記事項が異なる場合は、遺産分割協議書を作成するなどして、登記情報を変更するなどの手続きが必要です。
所有者が認知症になれば、売買契約ができず、相続を待つばかりになる
所有者である親が認知症になり判断能力がなくなると、不動産売買をはじめ、様々な契約事が出来なくなる恐れがあります。
もし不動産を売却する、売却資金を介護施設の入所費用に充てるという必要がある場合は、判断能力のあるうちに手続きを済ませる必要があります。
あらかじめ民事信託契約を結ぶなどして、家族に実家を売却する権限を与えておくといった対策が必要です。
認知症で判断能力のない状態で介護施設等に入ってしまった場合、空いた家を売りたくても相続を待つしかなくなってしまい、資金の準備ができないという事も起こりえます。
やはり家には思い入れがある
親が高齢になったら駅に近い便利なマンションでも買って、家は売却しようと漠然と考えている方も多いと思います。
しかし、親が高齢になるほど、どれほど古くて不便でも、住み慣れた家から離れるのを面倒に思うものです。引越しに労力がかかるという事もあるでしょう。
また、郊外や地方の家の場合、特に1970~80年代頃に購入した物件は値下がりしていることも多く、売却しても二束三文の金額にしかなりません。不動産会社の査定を見て二の足を踏んでしまうケースもあります。
いずれ売却することを考えるのであれば、早めに判断をする方が実現可能性は高くなると言えるでしょう。
このように、実家の将来について考えておくべきことは多いです。
長年住んできた家であり、家族の思いはそれぞれです。
この夏に熊本で大水害が発生しましたが、テレビで被害を受けた高齢者へのインタビュー見たら、それだけ大変な思いをされても、また同じところに家を建てて住みたいとおっしゃっていました。
先祖代々長年に渡って守り続けてきた土地に住んでいるならば、なおさらでしょう。
実家の問題は経済合理性だけで片付けられる問題ではありません。
家族それぞれの思いを確認しながら、事前によく話し合っておくことが大切だと思います。